「トゥギャザーでニッポン頑張れ」――パブリックビューイングでサッカー人気を回復しよう:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
南アフリカW杯まであと2カ月と迫っているものの、イマイチ盛り上がらないサッカー日本代表の試合。筆者はその状況は、現代の日本の世相を反映していると主張する。
スポーツ・ナショナリズムの断絶
スポーツはその時代の社会情勢をしっかり反映する。歴史的に見ても、1960年代の円谷幸吉、君原健二がメダルを獲得したマラソン、そして1960年代から1970年代にかけての“体操ニッポン”。とりわけ世間を一色に染めたのは、1964年(東京五輪)に銅、1968年(メキシコシティ五輪)に銀、1972年(ミュンヘン五輪)に金メダルと「有言実行」の活躍をした男子バレーボール。あの『ミュンヘンへの道』現象は、圧倒的なスポーツ・ナショナリズムだった。読者の多くは知るまいが。
一方、サッカーといえば、1993年の“ドーハの悲劇”(ドーハで行われた米国W杯予選最終試合の対イラク戦、後半ロスタイムに同点にされて初出場を逃した)という壮烈な共有財産がある。あの試合が起点となり、1998年フランス大会出場の道が開けた。サッカーファンが燃えた5年間だった。
その後4大会連続でW杯に出場することになる日本、快挙なのだが世界の壁は厚く、2002年日韓大会では決勝リーグに進んだものの、1998年フランス大会や2006年ドイツ大会では予選リーグで跳ね返されている。ドーハの悲劇で共有したナショナリズム体験は年を追うごとにしぼみ、忘れさられようとしている。高いハードルへ挑戦しようというダイナミズムが縮んでしまったのだ。
だが、逆に“身の丈に合った応援”には力が入る。地域のJリーグの試合の盛り上がりを見よ。どこもすごい。ところが代表はスルーされる。岡田武史監督の言う「W杯4位以内」というストレッチ目標は、ナショナリズムが途絶えているから響かず、絵空事として受け止められている。2018年と2022年のW杯開催に単独立候補しているのも、「どこかよその国のこと?」という雰囲気もある。
パブリックビューイングへ“トゥギャザー”しよう
でも、嘆くばかりじゃいかん。1人のサッカーファンとして盛り上げたい。で、1つ提案がある。それは“パブリックビューイング”だ。
競技場やスポーツバー、広場に置かれた映像装置で、試合中継をみんなで見ること。欧州では街角でみんなが気勢を上げるそうだ。米国には“スーパーボール・バッシュ”がある。アメリカンフットボールの全米一を決める試合日に、知人と観戦するホームパーティ。行ったことがあるが、アメフトに詳しくはないのに、みんなで見るとなぜか盛り上がったなあ。
スカパーJSATが主催する『2010 FIFAワールドカップ フェス スーパーパブリックビューイング』に行くのもよし。もっと身近な仕事場や自宅で、スモールに開くバッシュを開くのもよし。事業者なら駅構内や市役所のホール、学校の体育館、集会所、家電量販店売場で開こう。
日本代表の試合がある6月の3日間だけでも、「どこぞの街角でもパブリックビューイングがある」という“風景”を地域に広めませんか。家で1人でのテレビ観戦からみんなをひっぱり出して、「サッカーは街で見るもんだ」運動を広げませんか。おっと3試合じゃ、予選リーグで終わりか(笑)。
1957年、“街頭テレビ”で行われた力道山VS. ルー・テーズのプロレス世界選手権の中継には、1台のテレビに多くの人が押し寄せた。「ナショナリズムで団結したい」という意識形成は、いつの時代でも「体験共有」から始まる。ルー大柴の名言ではないが、人気復活のキーワードは「トゥギャザー」。流行りのTwitterも誰かを巻き込んでいく“together”の仕掛け作りになる。選手起用にも“パブリックブーイング”しつつ、「トゥギャザーでニッポン頑張れ」と応援しよう。
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