Twitterに頭を抱えるすべての広報担当者へ:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
企業におけるTwitterの導入が模索される中、うまい運用方法が見つからず、頭を抱える担当者が続出しているという。その「運用の難所」を乗り切る手法として「ペルソナ」の設定をお勧めしたい。
広報部 川口恵子 29歳 趣味はバーゲン巡り
「ペルソナ(persona)」とは本来、「仮面」とか「登場人物」という意味を持つ言葉だ。ポスト・モダンマーケティングの手法で、仮想の人格を詳細に作り上げ、リアルなターゲット像を構築することに用いられる。また、ネットマーケティングにおいても、自社サイトのユーザー像を明確化して、ユーザビリティーの向上や、コンテンツやサイト全体のあるべき姿を検討する際に用いられる。
本来のペルソナ構築手法は、市場調査などの定量データにユーザーインタビューなどの定性データを加え、最後には仮説と想定を重ねて、1つの人物像を作り上げていく気の長い作業である(構築手法は各種書籍やサイトで紹介されているため、今回は割愛する)。
ペルソナを作り上げると、ターゲット像が極めてリアルになることによって、ターゲットのニーズや課題、購入動機などが理解できるようになり、今まで漠然としていたターゲット像とのギャップを埋めることができるようになる。また、従来「ファミリー層」「シルバー層」などというひと言でくくってしまっていたターゲット像を具体的な個人として意識できるようになり、その行動もよりリアルに想定できるようになるという大きなメリットがある。
そして、関係者一同がターゲット像を共有しやすくなることから、マーケティングプランの全体の策定などや、より詳細な販促プランへ落とし込みをする時でもブレがなくなる。ターゲット像が明確でないと、各々が過去の経験に縛られたり、自分にとって都合のよいタイプをターゲットとして設定したりしがちになる。それを防止する効果があるのだ。
さて、Twitterの企業アカウントを複数担当者で運営する場合、ペルソナがどのような効用をもたらすかは、上記の「ターゲット像明確化のためのペルソナ構築」でおおむね理解できるだろう。つまり、「商品開発に有用な、消費者・顧客の声を収集する」というような目的を達成するために、広報部に新規配属された人物・ペルソナを構築して運用するわけだ。
「入社7年目で、営業部3年、マーケティング部3年の勤続の後、広報部へ異動になった川口恵子29歳・独身。趣味はバーゲン巡り」というようなプロフィール像を詳細に作り、さらに川口恵子がTwitterのアカウントを担当する勤務時間や、社内情報で知っている範囲、回答権限なども設定しておく。そうすることによって、ありがちなTwitter担当者が休日深夜まで対応したり、どこまでユーザーからの質問に回答していいのかなどに悩んだりするという問題も回避できる。
こうしたペルソナの設定と運用は、拡大して活用範囲を考えれば、企業のお客様相談窓口におけるE-mailや電話対応にも応用できなくもない。しかし、今までほとんどそうした活用例が見受けられなかったのは、問い合わせ側が企業の窓口にそこまでのフレンドリーさを求めていなかったからだと言えるだろう。良きにつけ、悪しきにつけ、Twitterのアカウントにはそれなりの「個性」をユーザー側は期待する「文化」が形成されつつある。その対応に、「ペルソナ」を一度、検討することをお勧めしたい。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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