キャズム超えへ! 掃除ロボット「ルンバ」の挑戦:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
米アイロボット社が開発、販売している掃除ロボットの「ルンバ」が売れている。そして、さらに売れ行きは加速度を増していく気配がする。そのワケは……。
主婦層ひきつけたルンバ
そんな背景をもって、ルンバは「自動掃除機」というキャッチフレーズに変更された。そして、2004年から明らかにユーザー層が変わっていったという。それまで同様のマニアな層は一定数存在するものの、家庭において主に家事を担っている女性層が購入意思決定をするようになった。最近では70代の高齢者や30代共働き世帯にすそ野が広がっている。まさに、単なる興味ではなく、実利を重んじる層が動き出しているのだ。70代は掃除機の上げ下ろしやコードのセットなど、肉体的負担からの解放を。30代共働き世帯は家事の時間短縮という効用を求めての購入だ。
「掃除は汚れや散らかりというマイナスの状態をゼロに戻す作業でしかない。それを自動化することによって、空いた時間でもっと創造的な仕事をしてもらえるようにする」ということが、ルンバのある生活としての提案であると、同社役員は言う。
パナソニック電工のシャワートイレ「アラウーノ」。同製品は便器の素材に汚れが付きにくい有機ガラス系の新素材を使用。家庭用の市販の中性洗剤を本体にセットしておけば、「トイレがトイレをアラウーノ」というキャッチフレーズどおり「自動洗浄」してくれて、わずらわしい日々のトイレ掃除から解放してくれる。新築やリフォームの際には指名買いされるというトイレの便器としては未曾有の大ヒットを記録した商品だ。
花王の液体洗剤「アタックNEO」。液体洗剤を従来の2.5倍という高濃度に圧縮し、少量でも抜群の洗浄力を発揮。さらに繊維が残りにくく、すばやく泡切れするという新洗浄成分の特徴を生かし、従来すすぎを2回していた洗濯の仕方を、すすぎ1回で済むようにした。キャッチフレーズは「節水・節電・節時間」。すすぎ1回、10分間という時間短縮で家事の負荷軽減を実現したのである。
マニア=イノベーターなユーザーから、「使える家電」としての効用・実利を評価して購入するアーリーアダプターである、先進的な主婦層に購入層を広げた「ルンバ」。
大ヒット商品である「アラウーノ」と「アタックNEO」が、掃除や洗濯というマイナスをゼロに戻す家事の負担軽減、節時間に対するニーズを証明している。その効用をもう一歩認知させることができれば、「キャズム」を超えてさらなる大ヒットにつながるだろう。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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