チキン戦争勃発、勝つのはマックかケンタか?:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
チキンといえばマクドナルド? 大規模な新商品キャンペーンを繰り出すマクドナルドに対する、ケンタッキーの運命やいかに。チキンをめぐる熱い戦いが始まっている。
逃げるケンタ、女性にターゲットを絞る
「オーブンローストチキン」を扱うケンタッキーの次世代店は「主として若い女性をターゲットとしている」と同社はニュースリリースで述べている。
「主として、若い女性層をターゲットに、お食事に、カフェタイムに、ちょっとしたブレイクにと、お気軽にご利用いただける店舗として、個食需要の獲得を狙います」とある。さらに、今後の予定も、「主要なターゲットとなる若者層、女性層の集まる首都圏を中心に展開し、今期中に3店、3年間で 100店の出店を目指します」としている。
確かに白とシルバーを基調として赤を差し色にしたオシャレな店舗デザインは女性好みを意識したようにも見える。さらに、「店舗デザインとあわせたシャープなイメージのユニフォームは、店舗スタッフの意見を取り入れてデザインした」と、細部まで抜かりはない。また、リリースを見ると同店は女性店長を起用しているようだ。
では、マクドナルドは誰をターゲットとしているのだろうか。そのヒントはCMにある。
キャラクターには笑福亭鶴瓶を起用した。CMは3種あるが特に「初恋編」に注目だ。鶴瓶が制服姿の女子高生グループとともに足湯につかりながら恋の話をしている。鶴瓶は1951年の59歳。還暦一歩手前だ。その世代から10代までという幅広いターゲット設定をしていると考えられる。
チキンバーガーTVCM ソルト&レモン「初恋」篇
CUTMSGCUTMSGCUTMSG
ケンタッキーは若い女性にターゲットを絞ることによって、マクドナルドとの全面対決を避けたのではないか。そもそも、圧倒的な力を持つリーダー企業に対して同じ土俵で戦うことは絶対に避けるべきなのだ。マクドナルドは昨今合理化のために400店規模の店舗整理を実施しているが、それでも3000店の規模を誇る。対するケンタッキーは1200店に満たない規模だ。
この戦いは、マクドナルドのコスト・リーダーシップ戦略、ケンタッキーの差別化戦略が基本となるはずだ。ケンタッキーはメインターゲットである女性層をがっちりつかんで、従来と異なる「揚げない」ヘルシーなチキンメニューでマクドナルドとの差別化を図り、そのポジションを確たるものにすることが重要だろう。
この「チキン戦争」に勝利するためには、攻める側も守る側もチキン(臆病)にならずに、大胆な戦略を展開することが求められるのは間違いない。消費者としては次々と繰り出される打ち手を楽しんで市場の活性化に貢献すればいいと思う。チキンをかじりながら。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
関連記事
- 売り上げより、「思い浮かぶこと」が大事――マクドナルドのチキン戦略
デフレに苦しむ外食業界の中、2010年3月度の全店売上高が497億2800万円と創業以来の最高記録を更新した日本マクドナルド。この夏には、「チキンバーガー ソルト&レモン」「チキンバーガー オーロラ」「ジューシーチキンセレクト」という3つのチキン商品を新たに投入するが、その戦略について尋ねた。 - 「デパクロ」の功罪と百貨店の明日を考える
百貨店に相次いで出店するユニクロなどのファストファッション。狙い通りの集客効果は出ているのだろうか。そして、今後の行方は? - ソニー「背景をぼかす」のとってもシャープな切り口
「背景をぼかす。心が動きだす。」などのキャッチコピーで展開する、ソニーのCM。「背景ぼかしコントロール搭載」を徹底訴求している。その戦略は実にシャープなのである。 - 書籍だけじゃない! 美容サロンも“FREE”の時代に?
『FREE』という書籍が刊行されて以来、Webの世界では無料が当たり前のような空気が醸成されつつある。これはリアルの場面にも広がるのか? 今回は美容サロンの取り組みを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.