“ブラックなカネ”と記者クラブの密接な関係:上杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」(3)(3/3 ページ)
「官房機密費から記者にカネが手渡されていた」という疑惑があるが、なぜこれまで報道されてこなかったのだろうか。ジャーナリストの上杉隆氏はこの問題を取材していくうちに、記者クラブとの密接な関係があることに気付いた。
窪田:米国のルールを持ち込むと、日本の記者は全員アウトですね(笑)。
相場:ボクは“即死”(笑)。
窪田:メシを一緒に食べることがダメなんですよね? 日本では、取材対象者とメシを食いに行って“ごっつあんになります”という記者は多い。
上杉:日本には「メシを食わなければ取材ができない」という独特の文化がありますね。もちろんそのときは「対等返し」で、自分の分も支払います。ただ料亭では受けとってくれないことが多いので、必ず料理代金相当のおみやげを渡します。もしそれでも金額が足りなかったら、翌日議員会館などに行って「ありがとうございます」と言って、別の形で必ず返しますよ。そうやってバランスをとるのが、日本型なのかなと思っています。
窪田:一部の企業ではちょっと前まで、企業広報の役割といえば記者に飲ませたり、食わせたりすることでした。
相場:そうですね。広報は記者を“ズブズブ”にしておくことで、もしスキャンダルが出ても記事に手心が加わることを期待しています(関連記事)。
窪田:しかし記事でお返しをするのではなく、日本人的な形で返す方法があるのではないでしょうか。例えばメシをおごってもらえれば、メシをおごりかえすように……。
→続く。
3人のプロフィール
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年からフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。著書に『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など多数。
相場英雄(あいば・ひでお)
1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。2005年に『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)など多数。
窪田順生(くぼた・まさき)
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、フライデー、朝日新聞、実話紙などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)などがある。
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