Zyngaは“無料”カフェ経営ゲームでどのように課金させているのか:野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(3/3 ページ)
「高品質なら高価格で売れる」という従来の常識が通用しない無料経済(フリー)が、インターネットを支配している。有料で売れない理由は、「価格が高いか安いか判断が付かない」と消費者を迷わせる心理的負担にある。仮想アイテムに、心理的ハードルを越えて買ってもらえる価格を付けるにはどうしたらいいだろうか。Zyngaの『Cafe World』や『Treasure Isle』から、その方法を学ぶ。
ゲームに学ぶマネタイズ手法
フリーから有料販売を実現する方法として、「企業側のルールに顧客を巻き込む」という仮説を、筆者は考えている。ゲームアイテムのように、そもそも価格が適正なのかよく分からない新しい財がある。価格について顧客に考え込ませる負担を与えないために、企業側からその判断基準を提供するのだ。
現代の消費者は、ネットにあふれる情報を見比べて、賢い買物をしなければならないという情報化社会のプレッシャーにさらされている。モノが少なく貧しい時代には、選択権があることが豊かさの象徴だったが、いまや選択権があることが苦痛になる。その心理的な負担がフリー経済の原因ならば、独自ルールをもって選択権を企業側に持ってくればよい。
ゲームがマネタイズに成功しているのは、このルール化がやりやすいからである。無料プレイの意味は、品質と価格についてのルールを知ってもらうことにある。プレミアムなサービスが欲しければ金を払うという判断基準を与えるための、フリーなのである。
今回はルール化の一例として、米国ソーシャルゲームに見られる「限界の演出」を取り上げたが、これが唯一の方法ではなく、ほかにも可能性があると考えている。この点については、また別の回で述べたい。
野島美保(のじま・みほ)
成蹊大学経済学部准教授。専門は経営情報論。1995年に東京大学経済学部卒業後、監査法人勤務を経て、東京大学大学院経済学研究科に進学。Webサービスの萌芽期にあたる院生時代、EC研究をするかたわら、夜間はオンラインゲーム世界に住みこみ、研究室の床で寝袋生活を送る。ゲーム廃人と言われたので、あくまで研究をしているフリをするため、ゲームビジネス研究を始めるも、今ではこちらが本業となり、オンラインゲームや仮想世界など、最先端のEビジネスを論じている。しかし、論文を書く前にいちいちゲームをするので、執筆が遅くなるのが難点。著書に『人はなぜ形のないものを買うのか 仮想世界のビジネスモデル』(NTT出版)。
公式Webサイト:Nojima's Web site
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