12人を殺した“銃乱射事件”――その後を追う:松田雅央の時事日想(2/3 ページ)
2009年3月、ドイツのヴィネンデンで銃乱射事件が起きた。普段はのどかな町が突如として恐怖と混乱に突き落とされたが、“その後”はどうなっているのだろうか。事件にまつわる問題点に迫った。
銃の所持は可能
生徒が書いた弔いのメッセージ。「マイヤー先生へ。先生と楽しい時間を過ごすことができました。もう先生の授業を受けられないのですね。先生が撃たれるなんて。サヨナラさえいうことができなかったなんて、悲しいことです」
ごく簡単に書くと、ドイツにおけるピストルや猟銃の合法な所有は「難しいが可能」である。どの町にも射撃協会があり市民がスポーツとして射撃を行っている。犯罪歴と精神的な問題がなければ銃の所有許可を取得することが可能だし、厳重な管理の下、自宅に保管することもできる。
かといって一般市民が日常的に銃を持ち歩くようなことはなく、筆者が個人所有のピストルを見た経験は10年前の1回きりだ。その人は筆者が住む市街区の自治会長で護身用に小型ピストルを所有していた。ずいぶん物騒な地区に思えるが、毎日のように事件が起きていたわけではなく、会長の銃所持にはそれなりの理由がある。
この地区は市街中心近くにあり、ディスコや夜に若者がたむろする広場も多い。そういった場所は麻薬の密売に使われやすく、夜間の巡回用に許可を得て護身用の銃を所有していたのだ。会長がギャング相手に発砲したという話は聞かなかったから、銃を使うことなく地区の浄化に成功したようだ。
規制の強化
さて、ヴィネンデンの銃乱射事件だけでなく、銃にまつわる事件が起きると必ず議論されるのが銃の規制強化である。そのときは間違いなく規制がワンランクアップし、2004年に法律が強化された際には違反件数が一気に8割も増加している。
しかしながらたび重なる規制強化には利用者からの反発があり、例えば青少年の銃使用を一律に禁止する法律に対しては「射撃クラブ内でさえ射撃ができなくなれば、オリンピックなど国際大会で優秀な成績を挙げることが不可能になる」といった弊害を訴える声も上がる。
銃所持に関する違反件数の推移(出典:ドイツ警察省発表の資料)
年数 | 件数 | 備考 |
---|---|---|
1993年 | 2万1935 | − |
1995年 | 2万2311 | − |
2000年 | 2万2823 | − |
2004年 | − | 銃所持に関する法律の規制強化 |
2005年 | 3万7023 | − |
2007年 | 3万8510 | − |
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