コラム
12人を殺した“銃乱射事件”――その後を追う:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
2009年3月、ドイツのヴィネンデンで銃乱射事件が起きた。普段はのどかな町が突如として恐怖と混乱に突き落とされたが、“その後”はどうなっているのだろうか。事件にまつわる問題点に迫った。
保護者の責任
9月中旬に始まった公判の争点は父親に銃の管理不備だけでなく事件そのものの責任を問えるかという部分にある。「少年がなぜこのような事件を起こしたのか」「家族は事件の兆候を察知できなかったのか」が争点となり、最高5年の禁固刑となる可能性もある。しかしながら刑事責任を問うのは困難との見方が一般的だ。
それでも検察が起訴に踏み切った背景には、銃管理に厳しい姿勢を社会に示すための「見せしめ」という意味合いが強い。思い起こすと前述の自治会長はピストルを戸棚の上に無造作に置いていた。ずいぶん無責任な話で、知れるところに知れれば間違いなく処罰の対象となったはず。確かにこういった所有者の注意を喚起する必要は常にある。
事件発生直後、少年が犯行予告をネットに書き込んでいたというニュースが一部メディアに流れたが、少年のコンピュータから書きこまれた形跡はなく誤報とされている。遺書らしいものも残されておらず、「動機は何だったのか」「なぜ家族が死ななければならなかったのか」「なぜ先生が撃たれたのか」など、残された人々の問いに対するはっきりした答えはない。
初公判に詰め掛けた多くの遺族が期待したのは、父親の口から語られる何らかの言葉だったがそれは一言もなかった。「精神的なショックを受け、とても話せるような状態ではない」というのが弁護士のコメントだ。
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