なぜ法律事務所のテレビCMは、うさん臭いのか(2/2 ページ)
テレビをつけていると、法律事務所のCMを見ることが多くなった。「借金で払いすぎた金利を取り戻します」といったことを言っているが、なぜ法律事務所のCMはうさんくさく感じるのだろうか。その理由を考えてみた。
訴訟で得られる費用
米国では弁護士の数が多くて、訴訟の数を確保しないと、その人達のおまんまが食えない。『ジャパン発見伝』(山本茂著)から抜粋させていただくと、米国での年間訴訟件数は、1800万件。その訴訟に注ぎ込まれる弁護士費用は、約8000億ドル。日本円に換算すると、約80兆円。米国の国防費の3倍にあたる巨費となっている。その訴訟費用8000億ドルを維持するために、米国の法律事務所の人達は、事件でもない事件を事件にして訴訟を起こす。
考えてみると訴訟で得られる費用って、何も産み出さない。単なる「お金の移動」である。そのお金の移動の上には、敗訴になった人達の恨みや後悔が乗ってくる。
「ヒトを見たら訴えろ」という行為に、大きな付加価値は生まれない。
弁護士は、もともと「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」という非営利目的を使命と規定されている職業である。過払い金を取り戻すのも、社会的正義と言われればそうなのだが、そのテレビCMの放映費用はどうやって確保しているのだ。社会的正義を傘にして、営利を追求しているとしか思えない。社会的正義を貫くなら、もっと他の手があるのではないだろうか。
消費者金融業界からの政治献金に塗れた多数の政治家と大手銀行が、グレーゾーン金利にも目をつぶってサラ金を無制限に拡大させた結果が、経済・生活苦による自殺者・年間8000人を超える世の中である。悪者は消費者金融各社として、法律を盾に天誅(てんちゅう)をくだす。そんなニュースの裏では、法律事務所がバンバンとCMを流している。どう考えても、うさん臭い。
クリントン政権時のクエール副大統領は、「我が国は、世界全体の70%の弁護士を創り出しているが、こういうことは必要だろうか。年間1800万件、その訴訟が我が国の経済の国際競争力を失わせているではないか」と疑問を呈している。無策のうちに法曹人口を増やし、過払い金回収のための法律事務所のテレビCMが無防備に流れる世の中を放っておいては、日本もお先は暗い。
訴訟の内需拡大は、きっとろくなことにはならない。
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