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コラム

街を壊さないで……再開発を巡る“他所者視点”相場英雄の時事日想(3/3 ページ)

小説『みちのく麺食い記者シリーズ』の取材のため、東北を頻繁に訪れる筆者。現地の美しい街並みに触れる機会が多いが、最近は再開発の問題を巡って地域が揺れている。今回の時事日想は、この再開発問題について考えてみた。

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 弘前市では、こんなケースにも遭遇した。地元民が数十年に渡って愛用するとともに、観光客が頻繁に訪れる創業百年を超える名物食堂の話だ。この食堂が老朽化、店主がリフォームを計画した際、県の関係者が慌てた。「厨房設備等は最新鋭のモノに替えても、石造りの概観だけは残して欲しいと懇願した」(県庁関係者)という。

 その理由は、簡単だ。「街の景色が変わってしまい観光客からのクレームは必至。大切な街の景観も台無しになってしまうから」(同)だという。この名物食堂の持つたたずまいが弘前全体にとって欠かせないものだと自治体自身が強く意識しているからに他ならない。もちろん、この食堂は現在も風情のあるたたずまいを残しつつ、営業を続けている。

 繰り返しになるが、筆者は東北各地の街を仕事、私用で頻繁に訪れているが、しょせんは他所者だ。ただ、ご当地食マニアでもあり、これを小説という形で微力ながら世に紹介させてもらっている立場でしかない。

 他所者の戯言かもしれないが、美しい地方都市からたたずまいのある商業地域がなくならないことを切に願っている。

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