こんな記者はいらない。“とんでもない新人”あれこれ:相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
メディア不況に揺れるマスコミだが、依然として記者職の人気は高い。狭き門をくぐりに抜けているので、優秀な者は多いが、その一方で“とんでもない新人”がいることも。今回の時事日想は“こんな記者はいらない”事例を紹介しよう。
おウチの躾は仕事に通ず
激しい現場取材の傍ら、新人教育を任された筆者が一番気になったのは、「お勉強ばかり優秀でも、社会性がゼロ」という新人が多数いたこと。ある年の新人君は、著名海外エコノミストが執筆した専門用語だらけの英語論文をわずか10分ほどで翻訳する能力を持っていた。一方で、職場でのあいさつはもとより、電話番すら満足にできなかった。加えて食事のとり方が汚く(筆者だけの意見ではなく)、取材先を招いた食事会では平気で上座に座るなど、「おウチのしつけがゼロ」(当時のキャップ)だった。
同様のケースに触れ始めると切りがないのでこの辺でやめておくが、あいさつができる、電話できちんとコミュニケーションがとれるといったごくごく当たり前のことができない人材が多すぎる、というのが筆者の経験した偽らざる印象なのだ。
換言すれば、おウチのしつけが行き届き、ごく普通の社会生活が営め、かつ、好奇心が強い(取材力がある、編集の能力が高い)といったプラスαの要素が、マスコミの人事担当者や担当役員の目にとまるのではないかと筆者は推察する。
念のため、本稿執筆に当たって複数の出版社に声をかけたが、「(就職難で)超エリートばかり入社しているが、融通のきかない輩が多い」(中堅出版社)、「(ゴシップの)張り込みで2〜3日のうちに音を上げる新人が増えた」(別の出版社)などの声が聞かれた。
記者、編集者という職種、マスコミという業界は、学生諸君には一見華やかに映るだろう。しかし先に筆者が記したように、現場仕事はきれいごとばかりではないし、体力・持久力が求められるケースも多い。必死で勉強を続けた挙げ句、こんな仕事に就かせることはないじゃないか、そう思う瞬間もあるはずだ。
ただ、どんな業種でも下積み、雑巾掛けを経なければ仕事のノウハウは身に付かない。広告減による減収、購買者数の激減などマスコミ業界を取り巻く環境はいつになく厳しい。また口うるさい先輩、上司が他の業界よりも遥かに多い。だが一度仕事を覚え、やりがいを見つけたら、記者や編集者の仕事は病み付きになることだけは保証する。マスコミ志望の諸君、覚悟のほどはいかに?
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