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コラム

夏野剛×中村伊知哉、『ソーシャル・ネットワーク』をサカナに日本企業の体質を語る(7/7 ページ)

1月15日公開の映画「ソーシャル・ネットワーク」は、ハーバード大学の学生が立ち上げたベンチャー企業を取り巻く愛憎劇だ。起業を目指す日本の大学生を前に、夏野剛氏と中村伊知哉氏がざっくばらんに語った。

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日本の新入社員って一所懸命仕事を探し出す

 ここで会場に「今後、どうなっていくのか」というアンケートが行われた。これから日本の産業が世界で勝てなくなっていくという悲観的な質問への挙手が多かった。

夏野 チャンスはあるけど、このままじゃダメだな、って思う人は? 日本にはヒト、モノ、カネ、技術、全部ありますよ。経営の三種の神器っていうのは、人材であり、資金であり、そして技術なんですね。

 ヒトはね、会社にもよるでしょうが日本企業って新入社員を配属してもほっておくじゃないですか。そうすると、新入社員って時間が余るんですよ。すると何が起きるかっていうと、日本の新入社員って一所懸命仕事を探し出すんですよ。そんな国、ほかにないから(笑)

 だって、中国なんか仕事がなかったらほかのことやってますからね。米国のシリコンバレーなんか、金曜日の午後3時に指示がなかったら帰っていいと思ってますし。それに対して日本人は、老若男女、働くんですよ。それこそイグアナ並みに珍しい。教育水準が落ちたとか何とかいわれるけど、大丈夫です。いまの50代の社員がいなくなっても20代の社員の方がレベルの高い仕事をしちゃうから。

 カネもあるんですよ。個人金融資産が1400兆円。企業の内部留保、つまり企業が中に溜め込んでいるカネが200兆円もある。合わせて1600兆円もあるんだから、国内で全部の資金が調達できる。そのうち、国債の発行に900兆円が食われていても、まだ700兆円もある。

 そして技術。面白い技術がある。新しいアイデアがいっぱいでてくるし、いろんなサービスがどんどん立ち上がってくる。要素技術もたくさんある。匠の技みたいのもいっぱいありますから。

すべてがそろっている日本、ただ1つを除いて

夏野 ただ、ないのはね、リーダーシップなんです。これから大企業に入られる方はご愁傷さまです。絶対に、あなたが入る会社の役員は、自分の会社のプロダクトのことを消費者以上に分かっていません!

 何故かっていうと30年も同じ釜の飯を食っている人がほとんどだから。そんな人たちだけで役員会が構成されている会社はチェックしてくださいね。食中毒で全員死にますから。そんなのあり得ないんですよ。世界の確たる大企業の役員が全員50代後半から60代のオジサンで、なおかつ30年間同じ会社でしかキャリアを積んでこなかったという時点でアウト!

 いままで世界に出て行けた企業があったというのはラッキーなだけ。高度成長期で国に成長力があったからで、いまは国に経済成長力がない。そうなると、差別化とかヘンなことをやっていかなきゃならない。あるいは、ヘンな人を雇わなくちゃならない。

 僕は日本を再生させるには、孫正義さんをNTTの社長にしなければと本気で思っています。ああいう普通の人じゃない人が、もうちょっと企業の経営者に出てくるようになると、日本の経済は再生すると思う。ヘンな人が企業の社長をやっているところに就職できればチャンスです。

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