パチンコになったアニメから、私たちは何を学ぶべきか?(2/2 ページ)
ピーク時には30兆円だったパチンコ市場は、衰退の一途をたどっている。貸金業法の改正により個人の借入総額は低く抑えられ、さらに中小ホールは淘汰されている。その衰退の陰で売り上げを伸ばしているのは、パチンコ店と一心同体の遊技メーカーである。
賛否が分かれた『フランダースの犬』のリーチアクション
しかし、よく考えていくと……、「版権もの」が推し進めてしまっているパチンコ店の大規模店への寡占化は、いずれ設置台数の減少とともに、その大規模店だけでサイクルできる台数に限界が生まれる。どの道、ネタ枯れでジリ貧、自分たちの首を絞めることになりはしないだろうか。
そして、自分たちの首を絞めているのは、アニメ制作会社や音楽会社や芸能事務所も同じである。パチンコ1台あたりの1時間あたりの目標粗利は1000円強と言われている。かつては、夢や正義を語っていたヒーローやヒロインが、リーチアクションの中で「次こそ、次こそ」とお金を吸い上げていくお手伝いをしているのである。「パチンコの台になったら、上がり」という感じが否めないのは、そういう価値の逆転感からである。
遊技メーカーやパチンコ店が、安易にキャラクターを活用すること。アニメ制作会社や音楽会社や芸能事務所が、捨て身でパチンコマネーを頼ること。どちらも、お金のために誇りを捨てていることにならないだろうか。目の前の利益や獲物を狩ってきた結果が、現在である。「版権もの」による「夢や正義」の消費は、新しい市場を掘り起こしているどころか、パチンコ市場の衰退を根っこから加速させている気がする。
ちなみに、2年ほど前に『フランダースの犬』『母を訪ねて三千里』『赤毛のアン』『小公女セーラ』などで知られる『世界名作劇場』もパチンコになっている。その中でも「あのころ泣いた名場面、そしてラストシーンで感動を」というキャッチコピーで出された「フランダースの犬とCR世界名作劇場」のリーチアクションは、ネット上で賛否が分かれた。その名も「昇天予告」。パチンコのリーチアクションのクライマックスが、フランダースの犬の最終回のあの大聖堂での名シーンなのである。
要するに、パトラッシュとネロが昇天したら……、チンチンじゃらじゃらと大当たりなわけである。遊技メーカーのマーケティングに感心する一方、違う意味で泣けてくる。大人になった私たちが学ぶべきは、この現金な社会の思惑である。(中村修治)
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