「情報のつまみぐい」から抜け出せ、次世代の出版メディアはいつ普及するのか(2/2 ページ)
電子書籍元年と叫ばれた割には手元に届かない電子書籍。ハーバード・ビジネススクールのヤンミ・ムン教授が言うような「Kindleのない生活は考えられない」という世界はいつになったら訪れるのだろうか。
「情報のつまみぐい」からいかに抜け出すか
実際、我々の仕事の中でも、インターネット上の記事をコピペして、クライアントへの提案書や、社内の報告書に仕立ててしまい、それを仕事だと満足してしまうことが増えてしまったことは否定できないし、便利な「情報のつまみぐい」にどっぷりつかってしまってもいる。
ネットや携帯端末が便利で表面的な情報提供を可能にしたのであれば、急速に変化する端末ツールとネットワークシステムを活用することで、単独の著者の力を超えた編集力を持つ出版社は、これからの役割として、「集中して読み」「洞察を提供する」メディア提供者として、次のステージへと昇る責任がある。
出版社側が「出版文化」と言うならば、その文化とはこうした知識や洞察の提供にほかならないし、また、そうした機能を有するユニットは、プログラマーでもなければ投資家でもないし、ましてやキャリアでもない。
小説にしろ、情報誌にしろ、あるいは写真集、絵画集、哲学書、ビジネス書にしろ、著者、クリエイターは、自らを追求し創りあげた作品を、さまざまな読者(視聴者)に、より多く接してもらえる機会を持ちたいだけのはず。
また、電子出版時代では、発信側となるプレーヤーはいわゆる著者だけではない。企業や団体、個人でも発信者としてプレーできる。「インターネットが普及し、全員が情報発信者となった」と言われたが、電子書籍の普及によって全員がパブリッシャーになれる時代になる。
確実に出版メディアはトランスフォームされている。次世代の出版文化を作るべく、出版社に課された役割は重い。(猪口真)
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