“ポスト菅”はこの男でいいのか? 10%しか伝えない政治部のひずみ:相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
菅首相の指導力低下などを受け、永田町がざわめいている。各種世論調査では早くも次期首相候補の名前が挙がっているが、それを伝える政治報道のあり方に問題はないのだろうか。今回の時事日想は、政治報道のひずみに触れてみる。
政治部の常識を捨てよ
通信社の元同僚や他社の政治記者らによれば、菅首相の退陣、あるいは解散総選挙を見越し、主要なメディアは既に準備を始めているもようだ。また、一部の新聞社やテレビ局では、ポスト菅の筆頭格として、前原氏のバックアップ体制に入りつつある、との情報も漏れている。
だが、果たして前原氏の人となりが正確に読者や視聴者に伝わっているのだろうか。筆者の感覚では「否」である。
主要紙やテレビに対し、前原氏の個人攻撃を展開しろとあおっているわけではない。鮮度の落ちた情報を仕入れている筆者にさえ、好感度の高い政治家の意外な一面が伝わっているのに、これを広く読者に知らせずにマスコミと名乗る資格があるか、と言いたいのだ。
筆者が通信社に在籍していた当時から、政治部には特殊な雰囲気があった。政治部に入る情報を100とすれば、記事になって読者に伝えられるのは10%程度。残りは、メモとしてストックされ、読者に知らされることはない。
筆者が昨年記事にした前原氏の“ウソ”についても、政治部の中では常識だった。知り得た情報すべてを読者に知らせることは物理的に不可能だが、政治取材のプロ、ひいては政治部出身の主要マスコミ幹部連が、自分たちの思うように政局を操りたい、あるいは特定の政治家をバックアップするために、知り得た情報に蓋をするのでは、一般読者や視聴者のマスコミ離れを助長するだけだ。
「政治部の常識は、世間の非常識」――。こんな言葉が広まらないうちに、政治報道の在り方を再考する時期に来ているのではないだろうか。
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