天下のウォルマートも苦戦するアマゾンの脅威(2/2 ページ)
米国第2位のブックストア・チェーン、ボーダーズが会社更生法による保護を申請。業界第2位でも倒産に追い込まれる市場波乱の背景にはアマゾンの影があるという。そして、天下のウォルマートも無傷ではないようだ。
ウォルマートも無傷ではない
そして、先日の報道によると、何と天下のウォルマートも無傷ではないというのです。
ウォルマートの業績発表を見てみると、米国内の既存店舗売上は2年連続で減少傾向にあります。そして、その要因の1つは「価格リーダーシップの揺らぎ」であるというのです。
「エブリデイ・ロウ・プライス(EDLP)」という革新的な戦略で、同社を小売業の王者として育て上げたサム・ウォルトンが聞いたら、さぞかし嘆くことでしょう。
米国の大手金融会社ウェルス・ファーゴが行ったアマゾンとウォルマートの価格比較スタディによると、「複数商品カテゴリーを横断したウォルマートの平均価格はアマゾンに比べて19%ほど高い」という結果が出たということです。
もちろん、この数値は「アマゾンの顧客はセールス・タックスと送料を払わないものとして計算する」ということが前提となっているようです。しかし、送料を考慮に入れて計算しても、両社の間には依然として9〜10%程度の価格格差が存在するということで、これが「ウォルマート=価格リーダー」という神話をもろくも打ち砕くものであることは明らかです。
先ほどカテゴリー・キラー・キラーという言葉を出しましたが、米国の1980年代はカテゴリー・キラーという新業態や、ウォルマートなどのマス・ディスカウント・ストアが開花した時代。豊富な品揃えと低価格を武器に、多くのパパ・ママ・ストア(個人店舗)を倒産に追い込みました。
天下無敵と思われたカテゴリー・キラーも時代の流れには勝てず、アマゾンのようなまさに「ミュータント的プレイヤー」を前にビジネス・モデルの見直しと自らのパラダイム・シフトを余儀なくされている……。「世界最大の小売業者もあぐらをかいてはいられないのだ……」ということを改めて認識させられたニュースでした。(石塚しのぶ)
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