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コラム

混合ガソリン「E10」は本当にエコなのか松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

バイオエタノールを10%混合したガソリン「E10」の販売が、ドイツで始まった。これまでの「E5」(5%混合)に替わり、消費者はE10を購入することになるわけだが、「エタノール割合アップ=エコ」と言えるのだろうか。

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気になる燃費


ガソリンスタンドの価格掲示(ユーロ/リッター)

 もう1つ、消費者にとって気になるのがE10の燃費だ。エタノールはガソリンに比べて熱量が35%小さいため、その分多くの量を必要とする。E10の導入を進めたドイツ環境省の消費者向けE10解説資料(参照リンク)によると「通常走行時の燃料消費量をガソリンとE10で比較すると差は2%しかありません。それよりも燃費は走行方法によって大きく左右され、省エネ走行を心がければ25%もの燃費向上が可能です」。熱量が35%小さい燃料を10%添加するのだから、単純計算すると差は3.5%になりそうなものだが、実際は2%程度に抑えられるという。ただし詳細なデータは掲載されていない。

 これに対し週刊誌『FOCUS』が独自に行った走行テストでは、まったく異なった結果が出ている(参照リンク)。 それによると「『フォルクスワーゲンGolf』を使用してE10の消費実験を行った。エンジンは排気量1.4リッター、122馬力。市街地を走行して比較したところ、スーパーガソリンの消費量は6.3リッターだったのに対しE10は6.6リッター必要となった(4.8%の増加)。また時速140kmの高速走行をした場合も同様の結果が得られた。高出力で100km走行すると、E10の燃料消費量はおよそ1.2リッター増える。さらにE10を使用するとメンテナンス費用も増加するため、年間20,000kmを走行するモデルケースで計176ユーロの支出増となる」。

 考えてみると、上記「25%云々」の解説もふに落ちない。本来、ガソリンであろうとE10であろうと省エネ走行を心がけるべきで、それをE10解説の引き合いに出すのは議論のすり替えでしかない。

 議論のたたき台となるべき環境省発表のデータが簡単な実験で覆されてしまい、解説に疑問符が付くような状態だから、とてもE10の評価が固まっているとは言いがたい。要するにE10の国内評価はまだバラバラで、どれだけいいのか悪いのか判断できないのが現状だ。


給油時の注意事項(出典:ドイツ環境省の資料)

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