コラム
混合ガソリン「E10」は本当にエコなのか:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
バイオエタノールを10%混合したガソリン「E10」の販売が、ドイツで始まった。これまでの「E5」(5%混合)に替わり、消費者はE10を購入することになるわけだが、「エタノール割合アップ=エコ」と言えるのだろうか。
ポテンシャルは高いが
さらに懐疑派が投げかけるのは「バイオエタノールは本当にエコ的なのか?」という根本的な疑問である。
まず、生産から消費までトータルなサイクルで環境中のCO2をまったく増加させないという建前のバイオエタノールだが、現在は生産と輸送に化石燃料が使われているため効果は30%程度しかない。(この点は上記のドイツ環境省E10解説資料にも説明がある)
またバイオエタノール生産のため食糧生産が圧迫され世界的な食糧価格高騰を招くとの懸念や、ブラジルにおけるサトウキビ畑拡張による熱帯雨林の破壊問題も取りざたされている。環境保全団体の主張によれば、サトウキビ畑となっているブラジルの土地の多くはサトウキビ栽培に不向きであるため、過剰な環境負荷をかけているという。
著者は今回、主にE10導入の問題点を取り上げたが、決してバイオエタノールの否定を意図しているわけではない。それどころかバイオエタノールのポテンシャルの高さを確信しているのだが、バイオマスの生産、バイオ燃料の製造、輸送、そして消費まで、解決しなければならない点が多々あることを痛感しているのだ。だからこそバイオエタノール推進派も懐疑派も、主張に沿った都合のいいデータばかりでなく偏りのないデータを公表し、客観的な議論をつくす必要がある。
関連記事
- ボルボとベンツに見る、ハイブリッドバスの未来
エコカーの主流としてハイブリッドカーが急速に普及してきた。商用車にもハイブリッド化の波が押し寄せており、特に路線バスの開発には各メーカーはしのぎを削っている。今回の時事日想は、ボルボとベンツのハイブリッドバスを紹介する。 - 電動自転車は普及するのか
クルマの世界では電気自動車が普及しつつあるが、電動の自転車も広まっていくのだろうか。今回の時事日想はドイツの老舗・ヘラクレスに、電動自転車の現状と今後の潮流を聞いてきた。 - 市民が選ぶ「エコカー・オブ・ザ・イヤー」に、どのクルマが選ばれた?
ドイツに「エコカー・オブ・ザ・イヤー」という賞があるのをご存じだろうか。自動車業界ではなく、VCD(ドイツ交通クラブ )という環境系市民団体が主催している。業界のしがらみに一切とらわれないので、“市民が選ぶエコカー”といえるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.