夕方の需要に対応、SOYJOYのシェアを奪った1本満足バー:コンビニ、ヒット商品の理由(2/2 ページ)
カロリーメイトに代表される健康食品。ひと昔前は朝食需要が大きかったが、近年では夕方に購入する人も増えている。それにともない売れ筋の商品も変化しているようだ。
SOYJOYのシェアが激減
そんな消費者の変化に伴い、健康食品のブランドシェアも変化している。
次図は2007年時点でのブランド別販売数量シェアである。トップブランドは大塚製薬の「SOYJOY」でシェア28%、同じく大塚製薬の「カロリーメイト」(24%)とアサヒフードアンドヘルスケアの「バランスアップ」(20%)で3強を形成している。
SOYJOYはテレビCMを中心とした販促活動と積極的な新商品発売がシェア獲得に大きく寄与しており、カロリーメイトと合わせると大塚製薬系商品で過半数のシェアを持っていたことになる。
そして、次図が2010年のブランド別販売数量シェアだ。3年前のトップブランドだったSOYJOYが5%と大きくシェアを落とし、代わってアサヒフードアンドヘルスケアの「1本満足バー」(25%)と「クリーム玄米ブラン」(14%)が伸びている。ただ、マーケティングでの定説であるトップブランド信仰はここでも有効で、市場の先駆者である「カロリーメイト」は38%とシェアを増やしている。
大きくシェアを獲得した1本満足バーにはさまざまな種類の商品があるが、売れ筋は「シリアルチョコ」「シリアルホワイト」「シリアルブラック」の3つ。そして、1本満足バーの快進撃の裏には、前述した「気分転換したい+甘いものを食べたい+健康が心配→健康食品で甘いものが欲しい」という小腹満たし需要に合致したことがあると著者は考えている。
過去の商品だと、マスターフーズの「スニッカーズ」が似たような売れ方をしていた。しかし、スニッカーズはカロリーが多いという問題があったため、高まる健康志向の流れに乗れなかったのである※。
また、1本満足バーはテレビCMによる販促活動より、コンビニの店頭でのプロモーション(POPやポスター)を重視、加えて商品コンセプトを「夕方からの頑張りに!」と明確にしたことも大きいと考えている。
こうした他ブランドに押されたことに加え、テレビCMを減らしたり、新商品の発売が減少したりしたことによって、シェアを落としてしまったSOYJOY。しかし、一時代を築いた商品として、テレビCMなどによるプロモーションなどによって、復権しないものかとも思っている。
著者プロフィール:笠井清志
船井総合研究所シニアコンサルタント。複数企業でキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)で連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。
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