コラム
読むことができない発売前の記事……記者はこうして手にする:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
新聞やテレビなどで「明日発売の『週刊○○』によると……」といった報道をすることがある。発売前の雑誌記事を引用することが多いが、メディアはそうした情報をどのようにして手にしているのか。その一端を紹介しよう。
既存メディアの分かれ目
筆者が現役記者だったころ、インターネットの掲示板で多種多様な情報が溢れ始めた。ただ、投資関連板の大半は、投機家が自らの利益誘導目的で“タメにする話”を流布する内容が中心で、通信社や他のメディアが後追いするような事態はまれだった。
だが、現在はYouTubeやTwitterなどの新しいサービス/メディアが台頭。先に当コラムでも指摘したように、既存メディアよりも早くニュース素材が拡散する。ゲラの事前入手どころではないのだ(関連記事)。
先の本稿記事でも記したが、記者の重要な仕事の1つが裏トリだ。一次情報が溢れかえり、膨大な量となっても、その使命は変わらないと筆者はみる。
先般、東京の繁華街で通り魔事件を起こすとTwitterに投稿した中学生が逮捕されたが、問題の投稿があった直後もTL上でさまざまな流言が飛び交った。その際、「メディアで確定情報が流れていない」とする投稿を筆者はいくつか目にした。信認低下が著しい既存メディアだが、裏トリという記者本来の「プロの仕事」が重要だと改めて感じた次第だ。繰り返し主張するが、裏トリの精度を上げ、いかに早く読者や視聴者に正確な情報を届けるかが、既存メディアの分かれ目になる。
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