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コラム

原発事故! すべての責任は“東電だけ”にあるのか藤田正美の時事日想・特別編(2/3 ページ)

東日本大地震の影響を受け、福島第一原子力発電所での事故が深刻化している。東京電力の対応の遅れ、情報の遅れなどが指摘されているが、この深刻な事態をいち企業だけに任せていいのだろうか。

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企業任せでいいのか

 すべてが落ち着いたとき、事故がどのように進行したのか、違う対処法があったのか、安全策の考え方を見直さなければならないのか、つぶさに検証する必要がある。また大きなリスクにさらされたとき、情報とともに、誰が責任をもって意思決定するのかを問う必要があるだろう。

 今回、内閣と東電が統合対策本部を設置したのは5日目のことだった。4号機から煙が出ている映像が放映されているのに、官邸に1時間も情報が来なかったことにいらだった首相が提案したのだという。そして東電に乗り込んだ首相は、経営陣に対し厳しい言葉で責めたと伝えられている。

 東電からの情報の出方に問題があったことは事実だと思うが、問うべきは、原発の事故があったときに企業任せでいいのかということである。どこかの時点で、企業の経営判断を超えた判断が必要なときがある。今回で言えば、冷却を必要とする原子炉に海水を注入するという決定をしたときである。外部電源が全部ダメという状況下で、ポンプ車を動員して海水を注入するというのは、東電にとってはそう簡単な決定ではない。1号機は最も古い原子炉とはいえ、海水を入れれば「廃炉」も覚悟しなければならない。新しく建設すれば3000億円ほどの資金が必要だ。

 専門家は「通常使う純水が間に合わなければ海水で冷やすしかない」と指摘していたが、巨額の損失を覚悟して海水を注入するという決定は、発電所の所長で決められることではあるまい。経営トップの決断を得ようとすれば、当然時間がかかるし、現場の状況をよく知らないトップは何とか発電所を救おうとするだろう。

 だからこそ事故が起きて、国に通報しなければいけないような事態になったときには、国が指名した専門家集団が、企業から完全に指揮権を奪い、迅速に事態を収拾する決断を現場でしなければならないと思う。もちろんそのためには、国つまりは総理大臣がその指揮官の決断を完全にバックアップする(結果はどうなっても責任を総理が持つということだ)姿勢がなければならない。


原子力発電のしくみ(出典:東京電力)

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