これからのキーワードは「感動」「シンプル」――震災がマーケティングを変える:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
東北地方で大地震が起きてから1週間。この1週間で消費者のメディア利用や、消費行動には大きな変化が起こった。震災後の私たちは、どのようなマーケティングのあり方を目指せばいいのか、考えてみた。
不謹慎ですか?
イベント中止も広がった。スポーツではJ1、J2など開催試合の延期を発表したJリーグの決断は早かった。一方、プロ野球セ・リーグは3月25日開幕を主張して非難が集中、延期したがしぶとく3月29日開催へ。
消費電力も計画停電リスクも大きいナイター開催が不謹慎なのは分かる。だが、企業広告まで不謹慎なのか? テレビではAC(広告機構)のニュートラルな「CM」オンパレード。災害時の広告は、はばかられる。スポーツどころじゃない。分からないわけではない。でも、サンドラ・ブロックもAKB48もアムロもイチローも、映画や広告やスポーツで稼ぐ。私たちもその夢にお金を払う。「不謹慎」のひと言で、やめなくてもいいイベントまで中止に追い込むのは違和感があった。
是非はともかく、世間はまるで「広告もマーケティングもいらない」と言っているかのようだった。
マーケティングはシンプルへ
震災後の消費者心理はどうなるか。恐らく本当に必要なこと、やるべきことを素面で考えるようになるのではないだろうか。ひと言で表せば「シンプルに生きよう」。企業の売り方(広告や販促)に関心が薄れ、「どう買うか」「どう使うか」「それは正しいのか」という自分なりの買い方尺度を持とうという意識が高まる。賢い消費者(お得を求める)から、賢明なる消費者(徳を求める)へ脱皮する。
マーケティングも「いかに売るか」ではなく「買ってもらう要素を消費者に見つけてもらう」方へシフトする。商品の良さ、必要性、正しさを訴求するシンプル・マーケティング。マーケティングメディアも“売り込み”型のクーポンは伸び悩み、売り手の顔が見えるダイレクト型が伸びるだろう。
何よりも「感動」がテーマだ。自衛隊の救助活動、枝野官房長官の不眠不休ぶり、9日ぶりに救助された祖母と孫。感動がたくさんあった。被災地から元気をたくさんもらった。私も誰かを感動させるサービスや商品を扱いたいと思う。シンプルに力強く復興するためにも。
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