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“若者的なる者が消費する”という概念ちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

高齢者はなぜお金をため込んで消費しないのか。一般には、将来への不安が原因と言われるが、ちきりんさんは、ビジネスサイドの人たちが高齢者になった経験がないことが原因と主張する。

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高齢者になった“経験”がない

 事業者が若者偏重から逃れられない1つの理由は、そもそも働いている人が「昔は全員若者だったが、自ら高齢者になったことは誰もない」からでしょう。

 国民の同一性が高い日本では、多くの人が自らの体験に基づき「こういうサービスや商品にはニーズがあるはず」と考え、それをビジネスにつなげてきました。

 こういうやり方は、自分が生きてきたのと同じような時代が続いている限り有効です。しかし世の中が変わる時には「自分の過去の経験」は役立たなくなります。過去と未来に断絶が起こった時には、自分の経験や固定観念を離れ、「事実や情報に基づいて論理で考える」必要があるのですが、これがなかなか難しいのです。

 例えば……、

 70歳の女性。夫が亡くなり、中堅地方都市で広い持ち家に1人で住んでいる。40代の2人の子どもはそれぞれ家庭を持ち、電車で3時間ほど離れた都市に住んでいて、正月だけ戻ってくる。

 腰や膝が痛いが大病はない。月々の年金が10万円ある。貯金は郵便局の定額貯金と簡易保険が3000万円、銀行預金が1000万円と、夫の残した株や個人国債があわせて2000万円くらいある。PCは持っていない。

 ……というような、“お金持ちの高齢者”が、いったいどんなサービスや財を求めているか、いやその前に、この人が毎日朝から晩までどういう生活をしているのか、想像できるでしょうか?

 多くの人は自分が高齢者になってからさまざまなニーズを感じ、「もしこういうサービスがあったらとても助かる。少しくらい高くても対価を支払うのに」と思うでしょう。しかしその人たちは、その時点ですでにビジネスの供給側で働いていません。

 ビジネスサイドが積極的にニーズを探りに行かない限り、それらが事業化されることはないのです。かくして圧倒的に大きなポテンシャル市場が、供給側から注目されることなく取り残されています。

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