“若者的なる者が消費する”という概念:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
高齢者はなぜお金をため込んで消費しないのか。一般には、将来への不安が原因と言われるが、ちきりんさんは、ビジネスサイドの人たちが高齢者になった経験がないことが原因と主張する。
日本も少しずつ変わってきた
しかし、ちきりんは悲観的ではありません。ものごとが変わるには時間がかかります。「男性と同じように働けない女性は一人前の労働者とは認めない」社会も、「女性も働ける労働環境」に変わりつつあります。同様に「若者のような行動をする人」だけを見てきたビジネス社会も、次第に非アクティブな生活をしている、大多数の普通の高齢者を有望な消費者グループとして認識し始めています。
その昔、企業社会は今より男性社会でしたが、家庭の中で女性が購買権を握り始めたのに対応して、積極的に女性の声を集め始めて、さまざまな商品開発につなげてきました。男性会社員は、自分の経験からだけでは、女性ニーズを理解できません。だから「調べて努力した」のです。この努力があって、初めて「自分たちと違うセグメントにモノを売る」ことが可能になります。
今後は同様のことが高齢者市場に関して起こるでしょう。大事なのは、そのスピードをもっと上げることです。先週書いたように、今の雇用不足、内需不足のこの国に、「使いたいものがない」と放置される1400兆円という規模のお金は、あまりにももったいないですよね。
……ということで、次回はこの“経済的な余裕のある高齢者”相手のビジネスに手を打ち始めている、もしくは、この市場の大きさに気が付き始めている、いくつかの事業や業界について書いてみたいと思います。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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