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コラム

ペットボトルのキャップ共通化に見るサプライチェーンの行方(1/2 ページ)

経営、マネジメントに携わる者にとっての最近の関心事の1つに、東日本大震災後、調達品の需給バランス、サプライチェーンがどう変わるのかというものがある。正直、現段階で答えがあるわけではないが、それを見極める上での参考になりそうなペットボトルのキャップ共通化を例に、その方向性について考察する。

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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 東日本大震災ならびにその後の福島第一原発事故により、PETボトル入りのミネラルウオーターの需要が急激に増加し、PETボトル用キャップの供給が不足し、ミネラルウオーター供給のボトルネックとなっていることを受け、社団法人全国清涼飲料工業会は、PETボトル用キャップの白無地キャップへの統一を決めた。

 これは簡単なことに見えるが、飲料メーカーにとってもキャップサプライヤにとっても難しい判断であっただろう。キャップの機能というと、「中身の飲料の品質を保つため」くらいに考えている消費者も多いかもしれない。しかし、飲料メーカーから見た時には、それのみならず、商品がどういったものかやブランドとして認知してもらうための情報伝達や販促の機能を持っている。

 「キャップは中身が傷まない、こぼれなければ良い」と考えている先の消費者であっても、実際には、キャップの色やデザイン、シンボルマークに自分が気付かぬうちに影響されて商品を買っていることもある。だから、飲料メーカーは、ボトル本体でなく、キャップにもこだわりを持って商品を企画している。色やシンボルマークを付けられない白無地キャップとなると、これまでのキャップの機能を落とすことになる。

 今回の共通化のきっかけは主要キャップメーカー3社より、自らの工場被災もあり、需要の急増に対応できないとの申し出があったことである。サプライヤからすると、白無地がペットボトルのキャップの標準規格となってしまえば差別化の余地が減らされ、価格競争しかなくなってしまう。だからこそ、飲料メーカーもサプライヤもさまざまなキャップのサイズやデザイン、色を考え、提案し、日本のペットボトルのキャップだけで200〜300種類とあるといわれるだけの数になっているのであり、今回のキャップ共通化の期間が被災キャップ工場が復旧し、供給が整うまでと予定されているのである。

 仕様の標準化、簡素化。調達・購買担当者としては、本来こうした動きは平常時にこちらから仕掛けなけれなければならないものだ。しかし、売り上げへの影響を恐れて誰もなかなか手をつけられない。今回の震災対応でその壁を1つ越えたわけだ。

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