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ソーシャルゲームユーザーは、いつ財布を開くのか――顧客満足度とマネタイズの関係野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(1/3 ページ)

どんなに面白いゲームを開発しても、せいぜい10%台の課金率というソーシャルゲーム。日々刻々と変化するユーザーの気持ちを追いながら、マネタイズのタイミングを判断するための「満足度曲線」理論を紹介する。

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「野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン」とは?

ゲームは単なる娯楽という1ジャンルを超えて、今や私たちの生活全般に広がりつつある。このコラムでは、ソーシャルゲームや携帯電話のゲームアプリなど、すそ野が広がりつつあるゲームコンテンツのビジネスモデルについて、学術的な背景をもとに解説していく。


 筆者が無料ゲームをプレイする時は、基本、よほどのことがない限り無料のままでいく覚悟でする。「財布を開いたら負け」くらいに思っていないと、一般ユーザーの感覚を保てないからだ。支払いの痛みを感じるために、研究対象とはいえゲーム代金は自腹である。

 プレイしてみて良い出来と感じたゲームは数多いが、その中のほんの一部のゲームにしか支払いをしていない自分に気付く。ユーザー全体でみても、約9割が無料でプレイしている。どんなに成功したソーシャルゲームであっても、その課金率は10%台に留まるといわれる。

有料アイテムを買った後はどうなるか

 我慢の挙げ句、有料利用に転じた後はどうなるのだろうか。筆者の経験では、大きく2つのパターンに分かれる。

 1つは、支払いの後に一層プレイするようになるパターンである。そもそも金を払ったのは、そのくらい面白いと判断したからであり、継続してゲームを楽しむためでもある。だから、課金をするとプレイ期間が長くなるのは、理にかなっている。

 それに加えて、せっかく支払ったのだから「元をとろう」という心理もでてくる。一般に、無料利用の方が“お得”で満足度が高いと思われがちだが、そんな単純な話ではない。無料だとかえってありがたみが感じられず、満足度が低くなることもある。

 もう1つは、金を払った瞬間に、ゲームを続行する気力がなくなるパターンである。例えば、ユーザー同士でバトルするタイプのゲームでは、負けると頭に血がのぼってついアイテムを買ってしまう。

 有料アイテムがあればゲームを有利に展開できるので、ほっとする。しかし、この安心感は、それまで無料アイテムでしのいできた緊張感や集中力までもぬぐってしまう。衝動的に支払う時ほど、こうした傾向が強いように感じる。

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