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コラム

安くて簡単なエネルギー――地域に供給する“熱”とは松田雅央の時事日想(3/4 ページ)

原発事故を受け、エネルギー政策の変革が迫られている。省エネや代替エネルギーは待ったなしの課題だが、まだ答えは見い出せていない。そこで安上がりで簡単に利用できる再生可能エネルギーを紹介しよう。

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コジェネレーション

 大型火力発電所のコジェネレーションに比べると、集合住宅や事業所、あるいは公共施設に設置する小型コジェネレーションの規模はだいぶ小さい。発電出力1〜50kW、サイズは大型洗濯機くらい、重量200〜300kgのものをドイツではミニ・コジェネレーションと呼ぶ。

 本体価格と設置費は2万〜2.5万ユーロ(約230万〜286万円)と省エネボイラーの倍かかり、メンテナンス費用も高いが、その代わり多くの州や自治体で設置助成制度がある。例えばカールスルーエ市は1kW当たり250〜700ユーロ(約2万8000〜8万円)を助成し、発電出力20kWの設備なら1万ユーロ(=500ユーロ/kW×20kW)になる。

 さらにコジェネレーション法により電力買い取り価格(5.11セント〈4円〉/kWh)が保証されているので、余剰電力はすべて売電することができる。天然ガスやプロパンガスを使用するコジェネレーション電力はエコ電力ではないが、エネルギーの利用効率を向上させCO2の排出削減に役立つため、このように手厚い助成が行われる。購入・設置・メンテナンス・燃料購入費をトータルで考えると、ミニ・コジェネレーションの導入により20%程度のコスト削減が可能だ。

 ミニ・コジェネレーションより小型(発電出力1kW以下)のものをマイクロ・コジェネレーションと呼び、これは戸建住宅にちょうどいい。この規模だと熱出力は6kW程度になる。これまでこのクラスは技術的な問題で実用化が遅れていたが、最近になりやっと市販されるようになった。マイクロ・コジェネレーションには、わずかな熱を動力に変えるスターリング・エンジンを用い、この内部にヘリウムが充填(じゅうてん)されている。心臓部ともいえるこの部分の気密保持が難しく、以前、日本の大手メーカーが開発に乗り出したこともあるが実用化には至らなかったようだ。


カールスルーエ市の地域熱供給網。左を流れるのはライン川。川の港湾地帯に大型火力発電所、川沿いに石油コンビナート(MIRO)がある

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