脱原発、あなたは賛成しますか?:原口一博×武田邦彦 それでも原発は必要か(4)(4/4 ページ)
ある調査によると、約7割が「原子力発電を段階的に減らして将来はやめる」ことに賛成した。多くの人が「脱原発」と考えているようだが、電力不足になることでさまざまな問題が起きていることも忘れてはいけない。原口一博氏と武田邦彦氏による対談4回目。
原口:もともと原発には高度な技術力が必要ですが、同時に巨大な不良債権を生み出しているんです。
原発の敷地内には使用済み核燃料が貯蔵されています。しかしその“核のゴミ”を青森県の六ヶ所村で処理するために、再処理工場の建設が進められています。なぜ六ヶ所村でそのような施設を造るかというと、要は核のゴミを処理できなくなっているだけのこと。
このことを指摘すると、原発関係者は「国連の常連理事国以外の国で、再処理工場の建設が認められているのは日本だけ。こんな素晴らしい国なのに、あなたはそれをやめろというんですか?」と言ってくる。しかしこの問題は巨大な不良債権を含めて、考えなければいけません。コスト的にも割りにあわないし、危機管理の点からも危ないんです。
だからといって一気に「原発をとめろ」と言っているわけではありません。まずは1回とめて点検をすべきだと思います。そしてダメだと判断したものについては、廃炉にせざるを得ないでしょう。
原発を一気に廃炉にすれば、同時に高度な技術を一気に失ってしまう。それは危険なこと。その部分は現実的なアプローチが必要で、まずは原発をとめて、点検する。そして将来的には「脱原発の方向に進んでいく」という1歩を踏み出さなければいけないと思っています。
→続く。
プロフィール
原口一博(はらぐち・かずひろ)
1959年佐賀県生まれ。1983年東京大学文学部心理学科(第4類心理学)卒業。1987年佐賀県議会議員当選。1996年衆議院議員に当選。2003年民主党副幹事長。2009年総務大臣。この間、郵政民営化に関する特別委員会筆頭理事、総務委員会筆頭理事、拉致議連(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)副会長などを歴任。現在は衆議院総務委員長を務める。
著書に『ICT原口ビジョン』(ぎょうせい)、『平和 核開発の時代に問う』(ゴマブックス)などがある。
武田邦彦(たけだ・くにひこ)
1943年東京都生まれ。1966年東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。1986年より同社ウラン濃縮研究所長を務め、自己代謝材料の開発に取り組む。1993年より芝浦工業大学工学部教授、2002年より名古屋大学教授を経て、2007年3月より中部大学総合工学研究所の教授。また内閣府原子力安全委員会の専門委員などを歴任する。
著書に『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)、『偽善エネルギー』(幻冬舎新書)のほか、原発問題をテーマにした『原発大崩壊! 第2のフクシマは日本中にある 』(ベスト新書)などがある。
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