若者よ、“鶏口”を目指せ!:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
震災などで先行きが不透明になる中、一見雇用が安定している“憧れの一流企業”を目指す若者たち。しかし、ちきりんさんは若くてもチャレンジングな仕事ができるような企業を選んだ方が、長期的にはメリットは大きいのではないかと主張します。
一番手企業でないからこそリスクをとる
ところで、人口急増で大注目のインド市場において、日本のスズキはトップの自動車会社です。
あんな混沌とした国に大企業は早くから進出しません。リスクは大きいし、商習慣もわけ分かんない。でも、スズキにとっては、トヨタやホンダが注力する日米欧ではトップにはなれませんし、中国でさえそれらの一流企業が早くから目を付けています。
「トップになれる市場」を確保するためには、ほかの一流企業がとらないリスクをとるしかありません。そのため早期にインドに進出し、苦境にもめげず頑張り続けてトップになったというわけです。
このように、企業においても「トップ企業ではないからこそ、リスクをとらざるを得なかった。そして成功した」という場合があります。
つまり、「一流企業にほかの一流大学生とともに入社」すると、「リスクをとらない企業×歯車としての自分」という掛け算の仕事になるのに対して、「3番手企業に少ない人員の1人として入社」すると、「リスクをとらざるを得ない企業×前に立たざるを得ない自分」という組み合わせになり、この差が20年経った時に出てくるのです。
若者よ、鶏口を目指せ!
最近オフィス街では、就職活動中と思われる学生とよくすれ違います。相変わらず多くの学生が「憧れの一流企業」を目指しているとのこと。
でも、大企業に「何百人かのうちの1人」として入社しても、大半の人は一生「牛後」のままです。しかもその「憧れの大企業」自体、大企業であるがゆえにリスクをとる必要がなく、チャレンジングな仕事より「書類を右から左に動かす」仕事が多くなりがちです。
ちきりんは時々、「就職活動なんて、ぼーっとしていればいいんじゃないか」と思います。出遅れて、行くところがなくて、「何となくここに入りました」という感じでもいいと思うのです。どこに入るかより、入ってから頑張れるかどうかの方が重要でしょう。
最近は“就職浪人”までする学生もいると聞きます。親も「納得いくまで就職活動をすればいい。」と、進学や留学の費用を出してくれることもあるとか。
「まじ?」と思います。たかだか学生の頭で考えた「この企業に入らねば、将来はない」などという思い込みのために、20代の1年間を浪費するなんてあまりにバカげています。
「周囲から『すげ〜』と言われるような人気企業」に内定をもらっても、その企業の中で自分に“鶏口”のチャンスが回ってくる可能性はほとんどありません。むしろ、「何でそんなところにいくの?」と言われる企業に入って、鶏口のチャンスをつかむ方がよほどリターンは高いでしょう。
キャリアというのは、“牛後”で始めると一生“牛後”になってしまいます。だから若い時こそ、鶏口を狙える場所を選ぶことがとても大事なのです。
若者よ、鶏口を目指せ!
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
関連記事
- 大事なものはコストで決めない
友人の選択や将来の進路など、「大事なことはコストで決めない」と主張するちきりんさん。居住用不動産の選択を例に挙げて、「購入と賃貸、どちらが安く済むか」ではない、「非経済面の比較」について解説します。 - 株式市場から“自由”になる会社たちの行方
株式公開すると、投資家から「利益を出し続けろ」「成長を続けろ」というプレッシャーを受ける一方、会社の目標は定めやすくなる、というちきりんさん。近年、あえて株式公開しない企業が増えていますが、そうした企業では目標設定が難しくなるのではないかと主張します。 - 日本に起業家が少ない理由
しばしば耳にする「なぜ日本には起業家が少ないのか」という話。ちきりんさんはその理由について、「起業家は日本の大組織では耐えられない人がなるものというコンセプトがあるからではないか」と主張します。 - 「ちきりんの“社会派”で行こう!」連載バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.