ロスジェネ世代の問題が、ないがしろにされている:城繁幸×赤木智弘「低年収時代よ、こんにちは」(4)(4/4 ページ)
東日本大震災の発生を受け、企業が被災者に対し、特別雇用枠を設けたりしている。震災という目に見える不幸にはできるさけ支援を差し伸べなければいけないが、その一方で働けない人の問題はないがしろにされていないだろうか。
城:特に震災後はそういった傾向がうかがえますね。震災後、多くの中小企業が潰れていっています。しかし原発事故を起こした東京電力に対し、政府は「助けよう、助けよう」としています。潰さない以上、企業年金や賃金といった既得権の見直しは困難でしょう。
また東電の株式を保有している会社は多いので、なかなか潰せないのかもしれない。潰さないことのメリットは、確かにあります。しかし社会の価値観まで影響されてしまうので注意が必要です。例えば地方紙に中学生からこのような投書がありました。「僕は将来、公務員か電力会社に就職します」と書かれていました。こうした内容が書かれるということは、政府が生んだ“副産物”のようなもの。
赤木:政府が「東電を守っている」ということは、国民もよく理解しています。また公務員も守っていました。なぜなら震災が起きても、公務員は仕事を失いませんでしたからね。そりゃ、みんな大企業の社員や公務員になりたがりますよ。
→続く。
プロフィール
城繁幸(じょう・しげゆき)
人事コンサルタントを務めるかたわら、人事制度、採用などの各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。著作に『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか−アウトサイダーの時代』(ちくま新書)、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』(PHP新書)ほか。
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赤木智弘(あかぎ・ともひろ)
1975年8月生まれ、栃木県出身。長きにわたるアルバイト経験を経て、現在はフリーライターとして非正規労働者でも安心して生活できる社会を実現するために提言を続けている。
著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』(双風舎)、『若者を見殺しにする国』(朝日文庫)、『「当たり前」をひっぱたく』(河出書房新社)がある。ブログ「深夜のシマネコ」、Twitter「@T_akagi」
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