そろそろ引導を、“偉い記者”たちに:相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
どこの世界にも「ベテラン」と呼ばれる人たちがいるが、大手メディアにいるベテラン記者はなにかと問題が多い。彼らは現場の第一線から退き、記者クラブにいわばサロン的に集まっているのだ。
偉い記者には逆らえない
製造業や流通業など、日本にはさまざまな種類の業界団体が存在する。同業者の意見を取りまとめ、政府や財界にアピールする。あるいは、所管省庁との交渉に臨む、などとその役割は多岐に渡る。
ただ、マスコミ業界のサロンである「日本記者クラブ」という組織は、その存在自体が大問題なのだ。代表取材という形で各界の著名人を招いても、ズレた論点で紙面や番組を編成し、これが一般の読者や視聴者に届けられてしまうからだ。
現在、インターネットの新興メディアが発達し、既存マスコミの“偉い人”たちが発信するズレたニュースとの間で溝が広がっている。タチの悪いことに、こうした偉い人たちは、ネット上に大量供給されるようになった一次情報に接しようともしない。また、これらの情報やニュース素材を一般の読者や視聴者がチェックしていることも理解していない。
「爺さんたちの首に鈴をつけたいのは山々だが、一応、社の大幹部だから」(某大手紙政治部記者)――。
知り合いの現場記者に連絡したところ、こんな答えが返ってきた。筆者が現役だったころと同様、現在もこうしたタチの悪いベテラン記者が幅を利かせているわけだ。
残念ながら、現場の記者たちはサラリーマンであり、声高に社内の実力者に異論を唱えることが難しい。苦言を呈した途端、左遷の憂き目にあってしまう。自浄作用の望みは薄い。
先に当欄でベテラン記者を有効活用せよと記した(関連記事)。記事で取り上げた人たちは、今も現場を愛し、取材に飛び回っている。一方、日本記者クラブという仲間内のサロンで安穏としている人たちは、相変わらず旧来の報道スタイルに固執したままだ。
「派閥政治」「数の論理」などの見出しを立てる前に、日本記者クラブの体制を一新、現場の記者に運営をバトンタッチすべきだ。また、この際、大手メディアは老害記者たちに引導を渡すべきタイミングではないだろうか。
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