「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」の銚子電鉄は今どうなっているのか?:嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(6/6 ページ)
5年前、「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」という前代未聞のフレーズをWebサイトに掲載し、副業で製造販売している「ぬれ煎餅」の購入を広く呼びかけて経営危機を乗り切った銚子電鉄。一時のブームが過ぎた今、どういう状況になっているのか小川文雄社長に尋ねた。
自分の目が黒いうちは絶対に会社をつぶさない
最後に「本業がぬれ煎餅で、鉄道は副業か?」などと一部の心ない人たちから皮肉られながらも、断固として銚子電鉄を存続させ続けることの意義を、小川さんとしてどのように考えているのかお聞きしてみた。
「『地元で必要とされているものならば残す』というのが基本的な考え方です。実は6年前に銚子電鉄の存続を求める署名活動をやったんですよ。そしたら、銚子市の人口約7万人に対して、市外在住の銚子電鉄利用者まで含めて、実に11万7000人もの人が署名に応じてくれ、その名簿を県会議長宛てに提出しました。
この結果からも明らかなように、銚子電鉄は住民の足として機能しています。バスで十分だろうという考え方の人もいますが、交通弱者の立場に立った時、果たしてどうでしょうか? 毎日通学する小中学生にとってはバスよりは電車の方が時間も正確で使いやすいのではないですか? それに電車の方が、事故に巻き込まれる可能性も少ない。
また、銚子電鉄が市の観光の目玉であることも見逃せません。
私は地元出身ではないし、生粋の鉄道屋でもないが、銚子電鉄を預かった以上は、88年の伝統の火を自分の代で消したくはない。私の目が黒いうちは絶対につぶしません」
72歳という年齢、さらには昨年、心臓の大手術をし、その後、執務時間は主として午前中だけという健康問題もあって、後継者問題についても言及していた小川さんだが、まだ当分の間は、その独創的な営業センスとリーダーシップで、話題性あふれる事業展開を見せてくれそうだ。
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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