アマゾンやウォルマートに立ち向かえ、グルーポン物品販売進出(2/2 ページ)
「限定期間内に一定人数が手を挙げればディスカウント・ディールが成立」というモデルで、「共同購入型クーポン」という市場をつくりだしたグルーポン。今度は物品販売に進出し、米リテール業界の大御所たちに挑戦状を叩きつけようとしている。
どんな商品が並んでいるのか
先日、私が住むロサンゼルス地域でローチンされた「グルーポン・グッズ」だが、ある日の品揃えを覗いてみた。
デジタルカメラ、エレキ・ギター・セット、エクササイズ・ウエアなどこの日の提供商品は6種。平均すると50%ちょっとのディスカウント率だ。見たところ72時間限定セールのようだが、対象がモノなので当然在庫に限りがあるらしく、セール開始から24時間以上が経過した時点で「売り切れ」の表示が出ているものもある。ざっと計算してみると、セール初日の売り上げは1億円程度といったところだろうか。
厳選された品揃えで、在庫の限られた商品を、期間限定、大幅ディスカウントで売りさばく「フラッシュ・セールス」は、米国ネット通販業界で現在最も注目されている販売モデルの1つだと言える。その「フラッシュ・セールス」が、売り手に提供する価値提案は「余剰在庫の処分」と「新商品/ニッチ商品のマーケティング」だ。
先の例を見てみても、「エクササイズ・ウエア」といっても、ただのエクササイズ・ウエアではなく、着用しているだけでセルライト除去効果があるエクササイズ・パンツ、起床時刻になるとアラームが鳴るだけではなく、跳ねたり転がったりする目覚まし時計、ソープストーンでできたアイスキューブ(保冷効果があって、冷蔵庫で冷やしておくと30分間は低温を維持できる。飲料を冷やすために使うが、普通のアイスキューブと違って溶けて味が薄まってしまうこともない)……。
アイデア商品/面白グッズの類が品揃えに多く、これらは流通業者ではなくメーカーから直接提供されている。メーカーにしてみれば、グルーポンで販促をすることで、いわゆる「販売促進」だけでなく、グルーポンの登録顧客に対してブランド認知/商品認知を高めるという思惑があるのだろう。
ちなみに、米国ではグーグルがグルーポンに対抗して始めた類似サービス「グーグル・オファー」の目覚しい成長ぶりがビジネス・メディアをにぎわせている。同サービスを通して提供されるプロモーション1件あたりの売り上げは、今年8月から9月の1カ月にかけて160%増、販売されたクーポンの数に至っては427%増の成長を記録した。
昨年12月にグーグルはグルーポンに対して60億ドル規模の買収提案を行い、破談に終わったという経緯があるが、最近波乱続きのグルーポンに「グーグルの傘下に入るべきだったのでは……」というささやきもちまたでは聞かれている。アマゾンが出資する競合、リビングソーシャルの追随も激しい。
「グルーポン・グッズ」が、アマゾンやウォルマート、ベスト・バイなど、米リテール業界の「現体制」に対して強力なライバルになり得るかどうかはまだ分からないが、共同購入型クーポンの市場においては「追われる立場」になったグルーポンが、あの手この手で首位の維持を試みていることは確かだ。変化の速い世の中である。「おごれる者久しからず」という言葉がこれほどしっくりくる時代も今までなかった。
市場の動きをいち早く読み、次々と新しい弾を投ずるとともに、時には競合の攻勢から素早く身をかわすことが必要だ。グルーポンは果たして逃げ切れるのか、悪あがきなのか巧妙な戦略なのか、今後の展開から目が離せない。(石塚しのぶ)
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