原発から14キロ、浪江町のエム牧場で生き続ける動物たち:東日本大震災ルポ・被災地を歩く(1/4 ページ)
福島第一原発の20キロ圏内は現在、警戒区域に設定されており、通行許可証がないと入れないようになっている。だが、そんな場所であっても、原発から14キロ地点にあるエム牧場では、毎日餌を与えていることから肉牛たちが生き残っていた。
渋井哲也(しぶい・てつや)氏のプロフィール
1969年、栃木県生まれ。フリーライター、ノンフィクション作家。主な取材領域は、生きづらさ、自傷、自殺、援助交際、家出、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪など。メール( hampen1017@gmail.com )を通じての相談も受け付けている。
著書に『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎)、『解決!学校クレーム』(河出書房新社)、『学校裏サイト 進化するネットいじめ』(晋遊舎)、『明日、自殺しませんか?』(幻冬舎)、『若者たちはなぜ自殺するのか?』(長崎出版)など。メールマガジン 「週刊 石のスープ」を刊行中。
5月、被災地の人々の生の声を集めた『3.11 絆のメッセージ』(被災地復興支援プロジェクト)を出版した。
9月30日。私は福島県双葉郡浪江町の「エム牧場浪江農場」を訪れた。ここに来るのは4回目だ。
福島第一原発の20キロ圏内は4月22日から警戒区域に設定されており、法的に立ち入りが制限されている。エム牧場は原発から14キロ地点にあるため、現在、通行許可証がないと入れない。今回はエム牧場の協力を得て、自動車で入ることができた。吉沢正己農場長の運転で、私は助手席に座った。
浪江町の津島中学校付近の国道114号線では、警戒区域に入る車両をチェックしていた。以前この検問に来た時は大阪府警が車両をチェックしていたが、この日の担当は神奈川県警だった。警察官に許可証を見せると、車両ナンバーをチェックされただけで入ることができた。
エム牧場までの道中、至るところに「I'll be back つしま」「もどるぞ つしまへ」と書かれた牧草ロールがあった。
「本当に帰れるのか」
吉田さんはそうつぶやいた。警戒区域に入ると、徐々に放射線量が高くなってくる。吉田さんが持っていた線量計は毎時15.47マイクロシーベルトを示していた。ただ、原発に近付けば線量が高くなる、というわけではない。より原発に近いエム牧場付近は毎時3〜7マイクロシーベルトを計測していた。エム牧場の中でも、牧草が多い場所だと毎時10マイクロシーベルト前後だった。
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