コラム
メディアに問題はなかったのか ノーベル賞報道の弊害:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
ノーベル賞の各部門が発表され、大手メディアはトップ級ニュースとして報道した。日本人が受賞しなかったことは残念だったが、その失望の背後には過熱する“先走り報道”がある。こうした報道の姿勢に、問題はなかったのだろうか。
証券ディーラーらに聞くと「山中教授の受賞がなかったことで、失望売りがかさんだ」との答えが返ってきた。もちろん、主要メディアが過熱気味の事前報道を行う前から、株式市場では「iPS関連銘柄」との投資リポートが出回り、これが個人投資家らの関心を集めていた。ただ「スウェーデン紙の転電が大量に掲載されたことで、追随買いに走ったネットディーラーは少なくない」(同)
株式投資は自己責任が原則だ。慌てて追随買いして損失を被った投資家を庇う意図は筆者にはない。ただし、先に触れたJ・TECだけでなく、iPS関連の銘柄は化学や医薬品など多様な業種に存在する。現地紙の情報だけに依存し、これを確定情報かと誤解させるような報道を手掛かりに損失を被った投資家は少なくない。
現地紙の報道を安易に転電した新聞・テレビの報道マンの多くは、株式市場と多くの投資家をミスリードしてしまったという意識は希薄に違いない。こうしたお手軽なニュース作りが、マスコミ不信に拍車をかけなければ良いのだが。
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