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なぜ中国大使館前の抗議は「定員5名」なのかニッポンの紛争地帯をゆく・新連載スタート(4/5 ページ)

いま「抗議デモ」がアツい。ウォール街の暴動は世界に広がり、日本にも上陸した。これは「内乱の前兆」なのか、それとも「一時的な流行」なのか。そこでマスコミが報道しない“怒りの現場”ではナニが起こっているのかを確かめるべく、中華人民共和国の大使館へ行ってみた。

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定員5人の“抗議ツアー”

 抗議活動に定員? んなアホな。遊園地のアトラクションじゃあるまいし……と呆気にとられていると、誘導する警官からさらに驚くべき言葉が。

 「抗議の方たちは撮影禁止ですよ。自分たちがやっているところを撮る人が最近多いですけど困りますからね」

 マナーを守って、みんなで楽しくやりましょう……といったところだろうか。しかし、ちょっと待ってほしい。大使館前とはいえ、天下の往来である。抗議活動が許されるのなら、その姿を写真におさめようと個人の自由のはず。そんなの、おかしいですよねえ。そう主催者の方に問いかけると、彼は困ったような顔で苦笑いをした。

 「なんでですかね。私たちもよく分からないんですけど」

 そうこうしているうちに、大使館前に到着。警備する制服警官のほか、あきらかに不自然な私服に身を包んだ公安刑事たちがざっと見ただけでも20人以上待機していた。

 警官に囲まれた5人は内モンゴル人民党の青い旗を、広げて一列に並び、天高く拳を突き上げた。

 「フリー、チベット!」

 「フリー、モンゴル!」

 「フリー、ウイグル!」

 5人とはとても思えない大きなシュプレヒコールに、思わず通行人が足を止める。門のはるか奥では、 大使館職員だろうか、ポケットに手を突っ込んだ2人が抗議を見つめていた。


5人だけとは思えない熱のある抗議

“抗議希望者”の人たちは麻布税務署前で順番がくるのをひたすら待つ

 10分ほど経過すると、故川谷拓三さん似の人の良さそうな顔をした警官が申し訳なさそうな顔で5人に声をかける。

 「では、そろそろ交代しましょうか」

 「はい、分かりました」

 紳士的な態度の5人は旗をたたむと、再び4人の警官に誘導されて再び元きた道を戻っていく。なんだかまるで“抗議ツアー”である。と、大使館前を警備しているコワモテの警官が、川谷さん似に声をかける。

 「ちょっとおし気味なので、次の組もう出させちゃってください」

 なるほど、法輪功の抗議が時間がかかったのもこれが原因か。

 150メートルをテクテクと歩き、麻布税務署前に戻ると、デモ隊のみなさんが「おつかれ」などと拍手で労をねぎらい、入れ替わりで次の5人が警官に囲まれて出発――こんな調子で、すべての参加者が抗議終了したのは、開始時刻から2時間をゆうに経過したころだった。

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