なぜ中国大使館前の抗議は「定員5名」なのか:ニッポンの紛争地帯をゆく・新連載スタート(5/5 ページ)
いま「抗議デモ」がアツい。ウォール街の暴動は世界に広がり、日本にも上陸した。これは「内乱の前兆」なのか、それとも「一時的な流行」なのか。そこでマスコミが報道しない“怒りの現場”ではナニが起こっているのかを確かめるべく、中華人民共和国の大使館へ行ってみた。
日本の抗議はお行儀がよすぎるのか?
待ち時間は2時間以上。定められた規制線のなかで一列に並んで静かに待ち、係員に呼ばれたら5人ずつ進んでいく。ツアー中のフラッシュ撮影は厳禁――。
なんだかディズニーランドの人気アトラクション前にたてられている「注意事項」のようだが、これが「中国大使館前抗議活動」の実態である。
なぜこんな奇妙なルールが定められたのか。いつごろからこれが当たり前になっているのか。警視庁に問い合わせをしたところ、「大使館前の治安維持」と「道路安全の確保」のためだそうで「従前から行っている」というなんとも味気ない回答を頂戴した。
なんだかワケの分からん制約で、抗議する方たちはさぞ怒ってらっしゃるのかと思いきや、主催者のひとつである日本ウイグル協会のWebサイトには活動報告として、「このようなルールがありましたが、現場の警察の方々はとても協力的で、中国政府に向けて強い意思のこもった抗議を行うことができました」とまんざらでもない様子。
この抗議から7日後、四川省ではチベット族の元僧侶2人が焼身自殺を図り、1人が亡くなった。翌日にはインドの中国大使館前では、抗議活動をした亡命チベット人13人がインド警察に拘束されている。
大震災でも略奪が少ないと、世界が日本人の規律正しさを賞賛した。ルールを守る抗議活動もなんだか日本人らしくていいかなと思う反面で、ほかの国と比べると、「怒り」の伝え方がソフトだと感じるのは、気のせいだろうか。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)がある。
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