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そのデザインは“適正”? 震災の年のグッドデザイン賞から見えてきたこと:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
「今年のグッドデザイン賞は何かが違う」。大賞の候補作品を見ていて、そう感じたという筆者。そのワケは今年のデザインテーマである“適正”にあるようだ。
人を自然に振る舞わせるデザイン
ところで、“適正”を英語でどう伝えているのか気になった。英文版のサイトでは「to be reasonable」とある。「理性のある、分別のある」という意味で、まあ“適正な訳”だろう。
なぜ気になったかというと、深澤氏といえば「without thought」だから。
深澤直人著『デザインの輪郭』にあった話。雨の日に玄関に入った。傘をたたんだ。傘立てがなくて、たまたま床にタイルがあり、幅7ミリの目地に傘の先を当てて壁に立てかけた。誰もが無意識にする行為。そういう“考えずにする行為”を英語で何ていうんだ? と深澤氏がネイティブに聞いた答えがwithout thoughtだった。深澤氏が「thoughtlessという言葉もあるが」と問うと、「それはむしろ周りに配慮ができない人を指す」と言われた。
私たちは暮らしにも地域にも地球にも、thoughtlessでありすぎた。reasonableになるためにどうしたらいいのか? 答えは深澤直人氏のデザインからも見えてきた。
ジャクエツ環境事業のFRP製の遊具「CUBE」。「何だろう?」と思わせるカタチだが、「通り抜ける」「滑り降りる」「よじ登る」など子どもは“考えずに”遊びだす。人を自然に振る舞わせるのがデザインの本来の役割なのだ。
ワン・モア・メッセージ。子どもたちに責任をもって伝えられるものだけを作ること、それこそが“適正”なデザインのあり方だと思う。
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