対iPhone4S――一般層へのスマホ普及に向けた、ドコモの2つの戦略とは?:神尾寿の時事日想・特別編(3/3 ページ)
一般層のスマホ移行が急速に進む中、端末・サービスの整備を急ピッチで進めるNTTドコモ。iPhone 4Sを擁するソフトバンク&auに対抗するためにとった二正面戦略、「Xi」「dメニュー」の狙いを解説する。
もちろん、課題もある。Xiの料金プランは確かに魅力的だが、それを利用するための端末ラインアップが弱い。今回Xi対応となったのはハイエンド市場向けの「NEXTシリーズ」のみであり、市場の広がりを作るには不足感があるのだ。特に店頭競争力のあるシャープ製とソニー・エリクソン製のXi対応モデルがないのが、残念なところである。また、Xiカケホーダイ(Xiトーク24)の競争力を存分に引き出すには、一般ユーザー層向けや法人市場向けのXiスマートフォンが必要である。ドコモではこれらのモデルを2012年夏商戦に投入する計画だが、今回のXi料金プランの競争力の高さを考えれば、もっと急ぐべきだ。
ドコモ成功の鍵は「Xiインフラ」に
ドコモの冬春商戦ラインアップは特定の端末に頼ることなく、コンテンツサービス・インフラ・料金などでキャリアの競争力をうちだし、総合力でライバルを上回るというものだ。この戦略はドコモの現在の立ち位置では当然のものであり、とりわけXiの競争力はかなり高い。今後、Xiスマートフォンのラインアップが増加し、普及が進むことで、iPhone対抗の部分も含めてドコモの競争力は増すだろう。
となると、ドコモにとって重要なのは「Xiインフラの拡大」だ。Xiは次世代インフラの中でも総合力が高く、実効通信速度の速さのみならず、伝送遅延の小ささなどもあって将来的な発展可能性が大きい。そのためXiエリアの拡大は、そのまま店頭競争力の拡大や顧客満足度の向上に直結する。ドコモの成功の鍵が、今後のXiインフラ構築にかかっているといっても過言ではない。
ドコモは今回の発表の中でXiエリアの展開計画を前倒しにしていくと表明したが、筆者はこの修正計画でもエリア展開が遅いと見ている。ドコモが特定の端末・特定のメーカーに頼らずに、キャリアとしての総合力を武器に今後も成長していく考えならば、Xiエリアの展開はすばやく徹底的に行うべきだ。そこでは屋外エリアを拡大するだけでなく、地方のエリア展開や屋内基地局の整備も重要になるだろう。現在のFOMAが当初の販売不振から復活し、その後に力強く成長した最大の要因が、「エリア拡大・品質向上の徹底」と「迅速なエリア高度化・高速化対応」にあったことを、ドコモは今いちど思い出すべきだろう。
かなり厳しい意見も述べたが、ドコモの「dメニュー」と「Xi」を軸にした戦略は間違ってはいない。あと一歩足りないのは、スピード感である。2011年から2012年にかけて、スマートフォン市場の店頭競争は苛烈化する。ここでのドコモの動きを、引き続き見守っていきたい。
著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)
IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(COTY、2009年まで)、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを務める。
最新刊は、『すべてのビジネスをスマホが変える』(徳間書店)。トヨタ自動車の豊田章男社長ほか、キーパーソンへのインタビューを中心にまとめた『TOYOTAビジネス革命 ユーザー・ディーラー・メーカーをつなぐ究極のかんばん方式』、本連載(時事日想)とITmedia プロフェッショナルモバイルに執筆した記事をまとめた『次世代モバイルストラテジー』(いずれもソフトバンククリエイティブ)も好評発売中。
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