ドコモ、「Xi」エリア拡充計画を急加速──「ヘビーユーザーこそXiを」の狙い:約3年で人口カバー率98%目指す
NTTドコモが、Xi対応スマートフォンを一挙投入。エリア拡充計画の前倒しとともに、「それならばXi加入しようかな、移ろうかな」と思わせるためのユーザー向け施策を多数用意する。
Xi展開、そして“3GからXiへ”の訴求施策を「ブーストアップ」
NTTドコモは10月18日、新世代通信規格“LTE”対応スマートフォンを含む2011年・2012年冬春モデル全24機種を発表。2011年11月より順次発売する。
今回の新モデルで、同社は製品カテゴリをNEXT(高機能型スマートフォン)、with(普及型スマートフォン)、STYLE(一般携帯電話/フィーチャーフォン)、ドコモタブレット(タブレット型デバイス)の4つに再編し、一般層から先進層まで幅広く訴求するラインアップで展開する。
中でも同社が推進する新世代通信サービス「Xi」対応スマートフォンを一挙に計4機種も投入するのがトピックの1つだろう。2011年9月に発表した同じくXi対応タブレットと合わせて、ここ数か月で対応モデルをグッと強化し「これで、Xiへいかが?」と積極的にXi契約へ誘導していく構えだ。NTTドコモの山田隆持社長も「今後、Xiスマートフォンをドコモのフラグシップモデルに据える」と今後のラインアップ積極強化を示唆する展開を述べ、先行するUQコミュニケーションズ展開のWiMAX、およびKDDIのWiMAXスマートフォンなどの同じく新世代通信サービスを猛追する考えを改めて示した。
新世代通信サービスは高速かつ大容量である点を各社それぞれ訴求するが、ユーザーとしてはまず「対応エリアであること」が加入するひとまずの条件となる。前述のWiMAXは2011年10月現在、実人口カバー率は全国政令指定都市で95%超、東名阪主要都市(東京23区、名古屋市、大阪市)で99%以上とうたう。人口カバー率は“対象地域のエリアカバー人口/対象地域の居住人口”とする人の集うエリアを軸に算出されるもので、全国各地くまなくエリア化されたわけではもちろんないが、屋内施設や地下鉄駅間の近日対応も含めて現時点でそこまでエリア化が進んでいる。
対するXiも「負けているとは思っていない」(NTTドコモの山田社長)とエリア化計画を大幅に上方修正し、「加速」して展開する。人口カバー率は2011年度末で20%から25%(5000→7000基地局)、2012年度末で40%から60%(1万5000→2万基地局)、約3年後の2014年度末で70%から98%(3万5000→5万局)と上方修正した。「この頃であれば、人口カバー率100%で国内他社より広エリアと評価いただいている2011年現在のFOMAネットワークとほぼ同等のエリアで、Xiがすでにあたり前になっているはず」(説明員)
ちなみにXiは、Xiエリア外であれば既存のFOMA(3G)ネットワークに切り替えて併用できるのも特徴で、パケット定額プランの適用範囲も共通である。さらにXi対応スマートフォンを投入することで、音声サービスも1契約でまかなえる(音声サービスは3Gネットワークを用いる)。
(KDDIのWiMAXスマートフォンも、WiMAX非対応エリアでKDDIの3Gネットワークに切り替えて使用できるが)WiMAXは原則としてデータ通信専用で、さらにWiMAXルータ(専用機)やWiMAX内蔵PCは、WiMAX非対応エリアでは別途ほかのデータ通信手段を用意する必要がある。どちらも発展途上段階のサービスであるだけに、2011年現在は「予備」としての機能があるかは意外に重要なポイントだ。もちろん、Xi契約で3Gデータ通信だけガンガン使われるのはうれしいはずはないが、それはXiエリア化の急速拡充とともに自然に解消されると想定しているだろう。
価格についてはXiスマートフォン向けに設定された、定額の「Xiパケ・ホーダイフラット」と2段階製の「Xiパケ・ホーダイダブル」を用意した。Xiパケ・ホーダイフラットは5985円/月(2012年4月30日までキャンペーンにより4410円/月)、Xiパケ・ホーダイダブルは2100円〜6510円/月(同、キャンペーン適用で2100円〜4935円/月)。7Gバイト分以上の通信で速度制限(上限128kbps)を施す(2Gバイトごとに2625円/月で制限を解除可能)が、こちらは2012年10月1日より適用となる。Xiスマートフォンユーザーはこちらに加えて、プラス780円/月(タイプXi にねんの場合)の基本料と通話料の合算額が毎月の基本ランニングコストになる。
また、先行して発売されたXiタブレットより携帯しやすいスマートフォンこそ「テザリング可能」の効果も増す。Xiスマートフォン/タブレットは、WAN回線(Xi)の通信を複数台の無線LAN対応デバイスで共有利用できるテザリング機能を標準でサポートする。
昨今、スマートフォンの普及とそれに応じたユーザーの急増で3Gネットワークの許容容量はもうすぐ限界と言われ、「データ定額制の廃止」や「(3G以外のネットワークに逃がす)オフロード」といった施策を通信事業者各社が打ち出している。「公衆無線LANスポットの無料化、利便性強化、スポット数の大幅拡充」といった施策が最近になって盛んに登場しているが、それももちろんそのための策である。
そのオフロード先には固定インターネット回線や公衆無線LANのほか、新世代のデータ通信サービスも対象だ。Xiのエリア化は人口/ユーザー数の多い大都市エリア、つまりトラフィックがひっ迫しているエリアより集中拡充され、さらにXi対応デバイスの拡充に応じて通信量の多いデータ通信(特に高リテラシー層のデータ通信)は自然に容量に余裕のあるXiへ流れる。結果として通信データが分散され、3Gネットワークの混雑も減る。
このいい流れは、一般ユーザーはもちろん、上位1%がトラフィック全体の30%を占めると言われる超ヘビーユーザーを含む高リテラシー層を引きつけるとより効果的だ。
2011年11月1日より、3Gデータ通信における“外部機器接続時のデータ通信上限額”をこれまでの1万395円から8190円に値下げする施策も展開するが「こちらは2年縛りが残っている既存ユーザー向け。この手の機能を望むユーザーは、できればすぐにでもXiに移ってほしい」というのが本音。Xiスマートフォンユーザーだけ24時間ドコモ内国内通話定額「Xiトーク24」を用意するのも、2012年1月31日までドコモスマートフォン購入時に実質負担額を5040円割り引くキャンペーンや“初代Xperia以前”(つまり、含む)スマートフォンからの機種変更時における分割価格残高を実質免除(端末購入サポート解除料の相当額をキャッシュバック)する施策、この理由に存分に相当するだろう。
もう1つ、Ice Cream Sandwichと呼ばれるAndroid次期バージョンを搭載するSamsung製スマートフォンを「2011年11月に発売する」、Xi対応フェムトセル(小型基地局)を「2014年に実用化する」などを具体的な時期とともに明言した点も、他社へ移るのを引き留めつつ「ゆくゆくはXiへ」の布石であることが分かりやすくも納得できる。ちなみに、上記の3Gデータ通信の外部機器接続時上限額を除いて、基本的にユーザー単位でのパケットデータ通信料は下がってはおらず、結果としてデータARPUも当面はさほど変化がない──と思われるのも、まぁうまい施策と感じる。
「2011年度のXi 100万契約という目標も上方修正する。Xi契約数は2011年2Q時点で約40万だが、3Q、4Qでプラス100万。2011年度末で140万ほどを目指す」(NTTドコモの山田社長)。先行するWiMAXは2011年9月純増数が7万6500で、累計123万。新世代通信サービスは単純に契約数だけで述べるものではないが、すでに射程圏内にあると感じられる指針の1つといえる。
対応デバイスの大幅拡充で一気に加速するXi。LTEやWiMAXは新世代/次世代通信規格などと言われるが、もう「次世代」ではなく「現行」なのかもしれない。2011年度末から2012年度においては、この競争本格化により2009年から2010年に流行したポータブルルータと3Gデータ通信手段から「次は何に乗り換えるか」、今度はどれに未来を託すか、悩ましい選択を迫られるユーザーが急増しそうである。
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