コラム
コストとメリットの関係は? 再生可能エネルギーの未来:松田雅央の時事日想(3/4 ページ)
原発事故以降、再生可能エネルギーの利用が緊急のテーマになっている。必要性は広く認められているものの、開発コストなどの問題から批判的な意見も多い。それでは世界の先端を行くドイツは、コストとメリットのバランスをどう見積もっているのだろうか。
メリットを試算するなら
これに対してメリットは以下の通り。
環境悪化の防止
- バイオマスは基本的にカーボンニュートラル(CO2の発生と固定が平衡)。さらに、水力、風力、ソーラーエネルギーはCO2を発生させないだけでなく、燃焼過程がないため窒素酸化物や硫黄酸化物も排出しない。
≪最新の研究によれば1トンのCO2を排出削減すると、70ユーロ分(7050円)の環境被害を防ぐことができる。2010年1年間で約85億ユーロの被害を減らしたことになる。
技術革新を促進
エネルギーの輸入減少
- ドイツは化石燃料の7割を輸入に頼っており、その割合軽減が国是。年間60億ユーロ(6431億円)の燃料輸入が削減された。
ローカルなエネルギーの開発
- 例えば農村地帯で木材バイオマスや畜産バイオマスの利用を増やせば、林業、畜産業の活性化や地域振興に役立ち、結果的に仕事の創出に貢献する。日本でも注目されるべき観点。
仕事の創出
- 現在、再生可能エネルギー関連就労者数はおよそ37万人。
- 地域に大きなビジネスチャンスをもたらすのも再生可能エネルギーの特徴。例えば、ソーラー発電やソーラー温水器の設置・管理は地元の業者が行うことになる。
- また再生可能エネルギー設備の生産は、多くを地方の中小メーカーが手がけている。こういったメーカーにも輸出のチャンスが生まれる。
安定したエネルギー供給
- エネルギーの輸入は国際情勢の影響を強く受けるが、自前の再生可能エネルギーであれば政治的リスクを免れる。例えば天然ガスなら主な輸入先であるロシアの思惑に左右されるし、原油の輸入環境は中東情勢によって激変する。
エネルギー市場価格を押し下げる
- エコ電力の普及により、通常電力の値下がり効果が期待できる。
- エコ電力も通常電力もそれぞれ電力市場を通して取引されている。エコ電力の増加により発電コストの高い通常電力から姿を消し、その影響で全体の電力相場が下がる。
- この経済効果(Merit Order Effect)により、2010年1年間で1kWh当たり約0.006ユーロ(0.64円)値下がりしたとされる。(家庭用一般電力料金の0.2〜0.3%に相当)。
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