コラム
コストとメリットの関係は? 再生可能エネルギーの未来:松田雅央の時事日想(4/4 ページ)
原発事故以降、再生可能エネルギーの利用が緊急のテーマになっている。必要性は広く認められているものの、開発コストなどの問題から批判的な意見も多い。それでは世界の先端を行くドイツは、コストとメリットのバランスをどう見積もっているのだろうか。
長期的展望が最も重要
そもそも、再生可能エネルギーに伴うメリットを金額に換算するのは難しい。
「温室効果ガス排出削減により防ぐことができた環境被害額」は算定方法によって大きな違いが生じるし、技術革新の効果も算出しにくい。さらに「国際政治のリスク軽減によるメリット」など算出は不可能だ。また、この報告書では公的な補助金の要因も考慮していない。それでも再生可能エネルギーの影響を議論する際、経済効果をある程度視覚的に示す必要があり、報告書はその目安として作成されたものだ。
報告書の最後にも記述されているが、実は一番大切なのは短期的な金銭勘定ではなく、もっと長期的に環境とエネルギーの未来を考える視点。つまり「持続可能な社会を作るため、再生可能エネルギーへのシフトが重要」という社会的合意の形成だ。
国とし確かな展望を持ち、コンセンサスを得ているのがドイツ。そしてまだ得られていないのが日本。再生可能エネルギーに対する踏み込み方が両国で違うのはこのためだ。
関連記事
- EVのバッテリー交換ビジネスは成功するのか
EV(電気自動車)普及のカギは、やはりバッテリー。フル充電に何時間もかかっていては「いざ」というときに、不安を覚える人も多いはず。そこで「バッテリーをそのまま交換する」という実験が行われているが、メーカーからは疑問の声も出ている。 - 白熱電球販売禁止! EUの家庭用ランプ事情
欧州でも白熱電球から省エネランプへの切り替えが進んでいる。省エネランプの普及に取り組む姿勢は日本と同じだが、その手法は違う。電力消費量を削減するために、欧州ではどのような取り組みを見せているのだろうか。 - メガソーラー時代がやって来る!
原発事故後、将来の主力電源としてソーラー発電が注目されている。ソーラー発電にすると「電気代が高くなる」「電気を安定供給できない」といった声があるが、本当にそうなのだろうか。欧州のソーラー発電事業に迫った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.