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優れて抽象的な思考は優れて具体的な行動を生む(3/3 ページ)

「その話は抽象的だ」は、ネガティブな意味で使われる。しかし、人間が抽象化能力をなくしたら、示唆に富んだ豊かで深い話ができなくなる。何でもかんでも「具体的に」という流れはむしろ思考の短絡化を招く危険性をはらんでいる。

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「抽象的である」はネガティブではない

 そこにきてまた、中間層に位置する研修の担当者や出版社の編集者も「アンケート数値が下がるから」「本の販売部数が上がらないから」と、ますます抽象的な内容を避けるなら(サラリーマンとしての彼らの評価はそうした数値によってなされることが多いのが事実だ)、ビジネス現場の「もっと具体的に、もっと即効的に」というアンバランスな流れは加速していく。しかし、そうした「分かりやすさ信仰・功利的な技術志向」の行き過ぎは、人々の思考回路をどんどん短絡的にしていく罠があることを認識しなくてはならない。

 「その話は抽象的だ」は、昨今ではネガティブな意味で使われることが多い。しかし、人間が抽象能力をなくしたら、それこそ大変なことになる。物事を分けることも、類推することも、応用することもできなくなる。数学で考えることもできなくなる。抽象化は人類が発達させた極めて重要な能力の1つである。結局、「抽象的」がネガティブなニュアンスになったのは、人々の抽象化能力の低下によって下手な説明しかできなかったり、受け手のほうの抽象化能力が拙いために高度な抽象を解釈できなかったりするための結果だとも言える。

 私たちは、振り子を戻すためにも、人間が持つすばらしい能力である抽象的思考力を掘り起こす必要がある。逆説的ではあるが、優れて抽象的な思考ができる人は、優れて具体的な行動ができる人なのである。(村山昇)

 →村山昇氏のバックナンバー

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