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金融市場は落ち着いたけど……統一通貨ユーロは維持できるのか?藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

ギリシャの次に債務問題がクローズアップされたイタリア。先週にはイタリア国債の利回りが7%台に上昇したが、欧州中央銀行が懸命に買い支えたとされたことから、6%台半ばまで下落した。統一通貨ユーロは今後どのようになっていくのだろうか。

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ギリシャはユーロ圏にとどまれるか

 そうした中で、ギリシャは果たしてユーロ圏にとどまれるのかとか、 統一通貨ユーロを維持できないのではないかという意見を主張する人々も増えている。現実的な可能性がどの程度かを判断するのは難しいが、もしギリシャが離脱したり、ユーロが崩壊したりするようなことになれば、その代償は欧州のみならず世界経済にとっても決して小さなものではない。

 例えば、ギリシャが通貨をドラクマに戻すとして、ユーロとの交換比率をどう設定するのか。もちろんレートを低くしすぎれば、国際競争力の回復には役立つかもしれないが、国民の富の対外的な価値は小さくなってしまう。かといって高くしすぎれば、市場はすぐにたたき売ってしまうだろう。現にアルゼンチンはドルペッグ制(ドルとの交換レートを固定する)から2002年に変動相場制に移行した時、交換レートは半年で4分の1になった。

 もちろんこの大幅「切り下げ」でブラジルなどの輸出競争力は大幅に回復したが、同時にそれは輸入品の価格が4倍になることも意味した。これに苦しんだのは消費者だけでなく、例えばメーカーなどにとっても生産設備や原材料を買う上で大変な負担になったのである。これと同じことがギリシャでも生じることになる。

 もちろんこの過程で生じる混乱は、ギリシャに貸し付けている銀行にとっては悪夢である。銀行の資産が毀損することは、当然、金融の収縮を招く。そうなったらことは欧州だけの問題ではない。それこそリーマンショックの再来だ。

 ギリシャのようなユーロ圏の債務国にとって統一通貨ユーロからの「円満な離婚」がないとすれば、とにかく緊縮財政を強化してバランスを取り戻すしかないことになる。この道は確実かもしれないが、同時に経済を悪化させてじり貧になっていく懸念もある。

 欧州の債務危機が今後どのようなシナリオをたどるのかは、まだまだ目が離せない。

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