コラム
オリンパス問題で見える、メディアとアナリストの不気味な共通点:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
過去の“損失隠し”にオリンパスが揺れている。これまでの不正を見抜けなかったアナリストたちには、顧客である機関投資家から厳しい声が浴びせられている。またこの問題での出足が鈍かったメディアにも通じるところがあるのだ。
誰のためのリポートか
話をオリンパス問題に戻す。同社が対アナリストでどのような対応を取っていたかは残念ながら筆者にデータはない。ただ、「内視鏡の部品や医療機関への納入動向など、精密機械の分野では会社側提供のデータが少ないとリポートを書けない」(銀行系証券・精密部品アナリスト)という環境がある中で、「アナリストが意図的に過去の損失隠しに目をつむっていたとの疑念が払拭できない」(米系運用会社ファンドマネージャー)との声がある。
顧客である投資家に正確で迅速な情報を届けるのがアナリストの役目であり、リポートはその最重要な伝達ツールだったはずだ。しかし「オリンパスに関する限り、担当アナリストたちは投資家ではなく、オリンパスの側を見ていた」(同)と批判されているわけだ。
東日本大震災後の福島第1原発事故以降、政府や東電が行ってきた国民向けの情報公開に際し、日本のメディアが読者(視聴者)と情報の発信元のどちらを重視していたかは、多くの読者がその結果を知っている。
アナリストとメディア、立場も仕事の内容も大きく違うが、情報を取るために取材し、これを顧客や読者に届けるという作業の行程は似ている。
今まで触れてきた通り、アナリストもメディアもどちらの側を向き、どちらのサイドに立って仕事をするかという根本的なあり方を、改めて考え直す時期にあるのは間違いない。
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