え、この記事が一面に? 日経型スクープの限界:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
日本で最も読まれている経済メディアといえば「日本経済新聞」だろう。だが日経の紙面を見て、「この記事が一面?」と感じたことがある人も多いのでは。読者がこのように感じる背景には、日経の構造的な問題が潜んでいるのかもしれない。
日経には優れた取材力を有する記者が多数在籍する。独自取材で得た専門的なデータを武器に、スキャンダルを覆い隠そうとする企業を屈服させるスクープが過去に何度も世に送り出された。
一方で、絶大なブランド力を使い、「紙面に載せてやる」的な態度で企業に接する記者も確実に存在する。取材される企業の側でも、この“上から目線”記者の性質を逆手にとって、自社の新事業や新戦略を“ニュース”として送り出す狡猾(こうかつ)な向きも確実に存在するのだ。筆者が勝手に命名した「日経型スクープ」はこれを指している。
先のパナソニックのスマートフォンの新戦略がパナ側からの売り込みだったのか、日経記者の取材に基づくものだったのかは承知していないが、先般のニュースに限っては「日経型スクープ」は市場に響かなかった。むしろ、「日経はいまだにこの手の記事を載せているのか」(先のファンドマネージャー)とネガティブな印象を抱く読者も少なくなかった。
クルマやテレビ、携帯電話、スマートフォンと日本企業の国際的なシェア、影響度はここ数年の間で著しく低下した。「日本企業の世界市場での立ち位置、先行きに関する分析記事を読みたいが、日経は旧来型の“スクープ”ばかり」(米系証券アナリスト)との声は少なくない。
フィーチャーフォンは消費者のニーズを汲み切れず、着実にシェアを落とし続けている。読者の需要を満たさないメディアも同様の軌跡をたどると言ったら言い過ぎだろうか。
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