スキャンダル記事の第一弾は、ありもしない合コン記事:中田宏「政治家の殺し方」(2)
「女性スキャンダルまみれ」で「ハレンチ市長」と命名された、前横浜市長の中田宏氏。不名誉なスキャンダル記事の第一弾は、ありもしない合コン記事だった。
政治家の殺し方:
この連載は書籍『政治家の殺し方』(幻冬舎)から抜粋、再編集したものです。
前横浜市長の中田宏氏は「女性スキャンダルまみれ」で「ハレンチ市長」と命名された。悩み苦しんで白髪頭となり、死を考えたこともあった。今だからこそ語れる、地方政治のダークな実態とは。
中田宏氏のプロフィール
昭和39(1964)年9月20日生まれ。会社員の父親の転勤に伴い小学生から高校生の間は横浜、福岡、大阪、茅ケ崎、横浜と移り住む。身長184センチ、体重75キロ。趣味は読書とフィットネスジムでのトレーニング。座右の書は「路傍の石」(山本有三)、座右の銘は「先憂後楽」。血液型、性格共にA型。
「ハレンチ市長」が弾けた合コン
不名誉なスキャンダル記事の第一弾は、ありもしない合コン記事だった。市長1期目のとき、看護学校の女子学生との合コンで、私が王様ゲームをもちかけ、どんどんエスカレートしてハレンチな行為に及んだという。まるで官能小説から拝借したような描写なのだが、そのとき撮ったかのような写真まで掲載され、さも信憑性のある記事に見せかけている。
しかし、その写真は全く別の会合で女性に囲まれている写真である。もちろん、いわゆる合コンの写真ではない。衆議院時代にやっていたミニ集会のひとつで、看護学校の学生たちと医療をテーマに話をしたときに撮ったものだ。ミニ集会の相手は商店街の人だったり、不動産業者の人だったり、子育てママだったり、いろいろだ。開催場所もさまざまで、支持者の自宅のときもあれば、居酒屋のときもある。軽くお酒を飲みながら話をすることも多く、このときもビールなどを飲んだだろう。
お開きという段になって記念写真を撮ることなど、政治家なら数え切れないほどある。記念写真なら、焼き増しして同席した人に配ることもあるだろう。写真の入手など簡単にできてしまう。そして、写真に写っている女性を買収して嘘の告白をさせれば、それで記事は完成だ。
裁判では、この写真を撮った女性が「記事のようなことはなかった」と証言してくれたので、身の潔白を証明できたのだが、記事の内容は一読しただけで、事実としてあり得ない内容になっていた。そもそも、合コンをしたとされる時期だが、被害女性の現在の年齢からさかのぼると、なんと18歳にもなっていない。当然、看護学校にも入学していないことになる。しかも、この写真は国会議員時代のもので、市長時代のものではない。写真も時間もまったく事実に反している。
さらに、この記事では横浜市会議員C氏のコメントを載せ、「ハレンチな中田氏の乱行を耳にして、本人に注意した」ら、「中田氏が鬼の形相で『わざわざそんな下世話な話をする必要はない。そういうスタンスなら選挙応援については考えなきゃならん!』と強く言ってきた」(鍵カッコ内は記事などの原文通り。以下同様)と書いている。
実は、このC氏、横浜市議会でこの問題が取り上げられたときは「そんなことは言ってない」と言い、裁判でも「合コンの注意はしていない」と証言している。しかも、彼は市会議員になる前に、くだんの看護学校の関連病院に勤めていた。
C氏は以前、私に選挙の応援を頼んできたことがあったのだが、議員活動に不熱心だという評判で、同僚議員を巻き込んで「応援する」「応援しない」のすったもんだがあった。いつも選挙に汲々としているようで、今年春の選挙では、本人の許可を得ないまま現在の横浜市長の林氏からの「推薦」を取り付けたと選挙公報に記載し、公職選挙法違反で書類送検された。
もちろん、こんな小細工を彼一人でやれるはずはない。彼の背後にはもっと大物がいるのだ。それについては後で触れる。
(続く)
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