キーワードは「パーソナル」「パブリック」「ポップ」――進化するデジタルサイネージ:中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/2 ページ)
サイネージの整備は世界同時進行。ディスプレイの技術力、ポップなコンテンツの文化力も兼ね備えている日本は総合力で世界をリードする条件も満たしている。
平時でも災害時でも社会の役に立つメディアへ
ところが。3月11日を機に、デジタルサイネージ業界は、あらためて自分自身を見つめ直すことになった。節電の要請。自粛ムード。灯火の消える都会。そんな中でサイネージはどう身をこなせばよいのか。業界は悩んだ。考えた。議論した。
首都圏では一斉にスイッチを落としたサイネージも、世間が平静を取り戻すにつれ、徐々に点灯していった。被災地及び全国で必要な情報をお届けできるよう努めた。平時でも災害時でも社会の役に立つメディアへ成長したい。そう考えた。
そこで、2011年、日本のサイネージには、またも新たなトレンドが重畳してきた。「べんり+つながる+みんな」の3傾向である。
1.べんり=役立つ
役に立ちたい。街のあちこちで災害情報や電力消費状況を表示したり、学校や病院でも働いたり。広告メディアから働くメディアへの拡張だ。
2.つながる=ネットワーク
ネットワークでつながっていなけりゃメディアじゃない。スタンドアロンの看板型が多かったのだが、ブロードバンドや地デジとつながって、街を面的に被うシステムになる。オフィスや家の中もマルチデバイスが連結する。
3.みんな=ソーシャル
ソーシャルサービスと連携したり、誰もが簡単にコンテンツが作れたりするメディアへ。プロが作るコンテンツから、みんなで作るコンテンツへの展開だ。
この傾向は早くも6月に開催された展示会「デジタルサイネージジャパン2011」でも明確に見ることができた。
役立つ系では、大日本印刷や凸版印刷などが大学、病院、行政、オフィス向けのサイネージを提案。PDC社は災害時にも働く太陽電池のサイネージを展示。
つながる系では、家庭内を対象とするNTTの「ひかりサイネージ」や、日立の「クラウド」サイネージなど、サイネージがインターネットメディアであることが鮮明に。地デジの電波で配信するモデルも複数見られた。
みんな系では、Twitter災害情報の表示システムなどソーシャルメディアと連動したモデルやサイネージ向けコンテンツ制作ツールなどが提案されていた。
こうしたトレンドが定着するのはこれからだ。でも恐らく、来年の展示会ではまた新しい傾向が台頭しているだろう。それほどサイネージの進化は高速だ。当面、目が離せない。
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