定年退職制度は禁止するべき(2/2 ページ)
年金支給開始年齢を引き上げざるを得なくなったことにより、「65歳までの雇用義務付け」が、実行されようとしている。しかし、改めて考えると定年退職制度は雇用対策法の趣旨と矛盾しているのではないだろうか。
定年退職制度がなくなったら……
定年退職制度を禁止すると、どうなるか。会社は、社員をいつまで雇えばいいのかが分からなくなる。いつまでも居続けられるリスクが高まるが、解雇はできないので、自主的にできれば早く辞めてくれるような仕組みに変更するはずだ。例えば、積み増し退職金などのメリットがある早期退職制度を作る、給与カーブも今のように同じように上がっていって60歳近くなったら同じように下がるのではなく、もっと早い年齢から大きな差がつくか、年数だけでは給与が上がらないような設計をするだろう。
また、働く側も、いつまで勤めればいいのかが分からなくなる。勤続年数に応じて高いポジションや給与が与えられ、それが定年退職制度によって一定の年齢まで守られるという状態ではなくなる。窓際にいながら定年までのカウントダウンをしている潜在的な失業者は、カウントダウンができなくなる。そこに処遇に差がつき、早期退職という道も提示されると、キャリアや人生設計について自分で考えて、選択するようになるはずだ。転職や転進が視野に入るので、社内でしか通用しないスキルや人脈に満足するようなこともなくなってくるだろう。
定年制がなくなると、企業が評価や選抜にメリハリをつけ、それらを通して人件費をより強くコントロールするようになる。結果として雇用の流動化が進み、働く人達の自立度も高まる。自然に、若者にもチャンスが増えるはずだ。厚労省から見れば、定年退職制度を禁止すれば65歳まで働けなくなる人が増えて、社会不安が増大してしまうということかもしれない。
であれば、「年齢にかかわりなく均等な機会を与える」などと方便を使わないことだ。本気で「年齢にかかわりなく均等な機会を与える」のであれば、雇用における年齢差別の撤廃を目指して定年制も当然禁止すべきだ。定年制の禁止は困るというなら、はっきりと「若者の雇用よりも、中高年の雇用を重視した政策を行っています」「企業は、セーフティネットの役割を担うべきだ」と言えばよい。(川口雅裕)
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