コラム
ダルビッシュ会見にみる、“伝わる・伝わらない”の分水嶺:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
大リーグへの移籍が決まったダルビッシュ有投手が、札幌で会見を開いた。その映像を見て「ファンを大切にしているなあ」と感じた人も多いのでは。彼が会見で示した姿勢……それは日本の政治家に欠けているモノではないだろうか。
筆者は実際に会見に足を運んでいない。また、彼の人となりも知らないが、スポーツニュースを通じて得た印象は、あくまでもファンにきちんと説明する、別れのあいさつを行う、プロのアスリートの真摯(しんし)さだった。
ダルビッシュ投手はマスコミに対してではなく、ファンに向けて明確なありがとうという気持ちを伝えただけなのだ。複数のテレビ番組でチェックしてみたが、彼の会見をスタンドで見守る人たちの中に、涙を流しているファンが少なくなかった。ファンに向き合っていた彼のメッセージがきちんと伝わった証左だ。
ここまで記すと、賢明な読者は既にお気付きだろう。
「全身全霊で」「命を賭す覚悟で」など、多くの政治家が国会や街頭演説で繰り出す言葉が、いかに空々しく、受け手に伝わらないか。
プロ野球ファンと選手、国民と政治家。単純に比較できないことは承知しているが、言葉やメッセージを発する側が、どれだけ相手のことを思い、気持ちを込めているかで、受け手の印象は全く異なるものになるのだ。
現在、永田町では国会の論戦が始まっている。選挙区を意識して、声高に主義主張をぶつける政治家が毎日ニュースで流れる。
政治家のセンセイ方、若きアスリートの会見を一度ご覧あれ。動画サイトでいくらでも視聴可能だ。なにが現在の政治家に欠けているかが明確に把握できるはずだ。
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